榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

コトラーからマーケティングの智恵・知識を拝借しよう・・・【続・リーダーのための読書論(36)】

【ほぼ日刊メディカルビジネス情報源 2014年1月31日号】 続・リーダーのための読書論(36)

智恵・知識の集積地

フィリップ・コトラーといえば、マーケティングの大家として知られているが、私は、彼はマーケティング理論・手法の採掘者・発見者というよりも、非常に優秀な収集者という印象を持っている。文学作品で譬えると、作家というよりも、確かな鑑識眼を備えた編集者という位置づけだ。

コトラーは多くの本を著しているが、『コトラーのマーケティング・コンセプト』(フィリップ・コトラー著、恩藏直人監訳、大川修二訳、東洋経済新報社)が、実戦的なアドヴァイスを求めているMRやリーダーの役に立つと思う。

実戦的なアドヴァイス

――ラインホールド・ニーバーのいうとおりだ。「神よ、変えられないことを心安らかに受け入れる美徳と、変えるべきことを変える勇気と、両者を見分ける知恵を与えたまえ。

――優秀な販売員は、2つの耳と1つの口を持って生まれてきた意味を忘れない。そして、自分が話す分の2倍、相手の話を聞くようつねに心がけている。取引をだめにしたければ、売り込みの言葉を滔々とまくし立てることだ。この教えが守れていたら、私だって、もっと優秀なMR、リーダーになれていたのにと悔やまれる。

――いま新たに求められているのは、顧客の金儲けや節約を支援することを通じて、「価値を創造する」ことのできる販売員である。説得型の販売からコンサルティング型の販売への切り替えが必要ということだ。コンサルティング型の販売には、たとえば、顧客に技術的な支援を提供する、顧客の抱える難題を解決する、顧客が事業運営の方法を抜本的に改めるのを支援する、といったかたちがある。

――社員が笑顔を見せているかどうかも、大切なチェック項目だ。次の言葉を忘れないでほしい。「2人の人間の距離を最も近づけるのは笑顔である」(ビクター・ボーゲ)。

――ヘンリー・フォードは、「失敗とは、前よりも賢い方法で再挑戦するための機会にすぎない」と述べている。この言葉に、どんなに励まされてきたことだろう。

――自社が供給する立場であれば、厳しい要求を突きつけてくる顧客に感謝すべきだ。ロールスロイスはボーイングのことを「最も手強い顧客」と呼び、その手強さに感謝の意を表明している。手強い顧客の要求水準を満たすことができれば、さほど厳しいことをいってこない顧客は、わけなく満足させることができる。私の経験を振り返っても、自分が大きく成長しつつあるぞという実感を得ることができたのは、手強いドクター、優秀なライヴァルMRに出会って苦労した時であった。