榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

一流MRを目指している君へ・・・【あなたの人生が最高に輝く時(25)】

【MR・メディカル専門職の転職 2013年5月28日号】 あなたの人生が最高に輝く時(25)

メンターとしての4冊

MRというのは、大変だが、やりがいのある仕事だというのが、私の長いMR経験+MR育成経験から得られた結論である。

どうあがいても、人生は一度しかない。そこで、MRをやる以上は一流MRを目指すぞと決意を固めている君にとって、この4冊は心強いメンターになってくれるだろう。

4つのディテーリング・スキル

MRのための営業心理学――上手に医師と自分につきあう15の秘訣』(佐藤龍太郎著、エルゼビア・ジャパン)は、コンパクトな一冊に、「気分良く営業するためのスキル」、「もっと楽に信頼関係を作るスキル」、「営業を楽しみながら科学するスキル」、「最高の自分でいるためのスキル」がギュッと詰まっている。

神経言語プログラミングという「成功を収めるためのスキルと科学」がベースとなっており、「自分がしてもらいたいことを相手にせよ」との基本姿勢が貫かれている。

「最高の製品とは営業パーソンその人」、「医師の反論は『買ってあげたいから、もっと納得できる理由を示してよ』という催促」、「クロージングは『自信と情熱』」、「ボス・マネジメントとは、上司とWIN-WINの関係を作るためのスキル」、「話の印象は、93%がボディランゲージと声の調子で決まる」、「人は必要なもの(ニーズ)ではなく、欲しいもの(ウォンツ)を買う」、「画一的な製品説明ではなく、医師が重視している処方観に合うように、話す内容、順番、言い方を工夫する」、「他社MRの動きを知る」、「優秀になりたければ、優秀なフリをしろ」――といった秘訣が満載されているので、手元に置きたい本である。

優秀MRの発想と行動

君が最高レヴェルのMRを目指そうとするとき、『なぜあのMRは顧客に好かれているのか?――イケてるMRの48手』(池上文尋著、医薬経済社)が、さまざまなヒントを与えてくれる。メリハリをつけ、独自性を発揮し、持ち味をアピールすることによって、顧客のマインド・シェアを獲得している48名の優秀MRの発想、行動、強みが、著者のインタヴューによって明らかにされている。

「テーマ別訪問MR」、「楽しく仕事する仕組み作りMR」、「MS活用型MR」、「ゴルゴMR」、「世話好きおじさんMR」、「逆張りMR」、「キャリアサポートMR」、「患者集客MR」、「副作用マニアMR」、「クリニカルパスMR」、「ランチェスター戦略MR」、「代替医療MR」などの戦略・戦術が具体的に紹介されているが、例えば、「ナンバー2戦略MR」では、ターゲティング方法を少し見直すだけで新しい重要顧客が見えてくることが示されている。また、「他業界発想MR」では、異業種出身MRの製薬業界の常識に囚われない強みが指摘されている。

巻末の「MR進化論」の「MRの将来が見えない」、「表敬訪問MR活動はなくなる」、「なぜ、廊下に立たないMRが売上をあげるのか?」、「MRの未来図」は、著者一流のワサビが利いていて、刺激的である。

欧米の一流MRの凄さ

新プロフェッショナルMRの条件――新しい時代を生き抜くための70のヒント』(植田南人著、医薬経済社)には、国内だけでなく欧米のMR事情にも通暁している著差の卓見がちりばめられている。啓発されること、知的刺激を受けることが多く、私の座右の書となっている。

「専門MRとして成功する条件」、「成功の秘訣は『感謝の気持ち』」、「医師の心に残るディテーリングが実施できる」、「成功するMRに共通する基本5ヵ条」、「第一印象を大事にする」、「会社が合併しても生き残れるMRになる」、「小さな企業のMRでも差別化で勝負」、「MRの4つの階級」――といった内容からも分かるように、目標を持ち、挫けそうになる自分を駆り立て、考え、行動する、そういう「目標達成意識」の高いMRにとって、この本は親身な心強い味方となってくれるだろう。

営業力の点検

原点に立ち戻り、自分の営業力を点検しようとするとき、強力な助っ人となってくれるのが、『人間系ナレッジ・マネシメント――営業力をとことん高める』(山本藤光著、医薬経済社)である。これは、本来、部下のMRの営業力をとことん高めることを目的として、営業リーダー向けに書かれた本であるが、一流MRを目指しているMRにとっても必読の書である。

私が、この本をMRに薦める理由は3つある。第1は、内容の全てが、33歳で総務部購買係長から自ら望んでMRに転身した著者の苦闘→成功→出世→左遷→プロジェクト成功→合併→早期退職→独立という実体験に裏打ちされていること。第2は、方法論が一般的、総花的でなく、「製品ファイルの作成・活用」といったように具体的かつ簡潔明瞭であること。第3は、MRの身で、自分がこれからなるであろう営業リーダーの視点でMRの営業力を見ることができること。

著者は、「優秀MRと平均的MRの違いを一言で表現するなら、仕事に対する貪欲さとなろう。貪欲とは、なりふり構わず何でもありということではない。『RPDCサイクル』を、的確かつ迅速に回すということなのだ」と述べているが、まさにそのとおりだ。また、著者は、MR活動のスキルを「インプット(知識)」、「プロセス(ターゲティング)」、「プロセス(アクセス)」、「プロセス(ディテーリング)」、「アウトプット(成果)」に分解して、それぞれのベスト・スキルを明示している。