榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

新刊が出版されると、「先生!シリーズ」が読みたくなる理由・・・【山椒読書論(238)】

【amazon 『先生、大型野獣がキャンパスに侵入しました!』 カスタマーレビュー 2013年7月25日】 山椒読書論(238)

新刊が出版されると、無性に読みたくなる本のシリーズがある。小林朋道の「先生!シリーズ」である。

第7弾の『先生、大型野獣がキャンパスに侵入しました!――[鳥取環境大学]の森の人間動物行動学』(小林朋道著、築地書館)も、期待を裏切らない内容であった。

今回も、大学とその周辺の動物と人間を巡る興味深いエピソード満載であるが、このシリーズの魅力は、著者の姿勢にあると考えている。「このハチは、もう家族の一員だ!――セグロアシナガバチと過ごした8カ月」の章は、こういう文章で結ばれている。「私は、ハチたちと触れあった約8カ月間、ハチについていろいろなことを学び、いろいろなことを考えた。そして、あらためて思うのである。人間は、野生生物と接することによって成長できることがある。生物の形態や行動を見ながら『なぜだろう?』と問い、その答えを求めることは、われわれの脳の力を鍛えてくれる。豊かにしてくれる。それは、技術力であったり、発想力であったり、いわゆる問題解決能力の向上にもつながるのではないだろうか。そして・・・、私がハチコ(著者がそのハチに付けた愛称)たちに対して感じた気持ち、それはきっと、同種であるほかの人間に対する共感や思いやりの気持ちにもつながるのではないだろうか。他者への共感や思いやりの気持ちも成長させてくれるのではないだろうか」。

それにしても、著者が教授を務める小さな大学の環境の素晴らしさは、生き物好きにとって羨ましい限りである。「私が実習で利用しているヘラジカ林(ちなみに私は、大学キャンパスの北東部にある林をヘラジカ林と呼んでいる。上空から撮った航空写真で見ると漫画ちっくなヘラジカの顔に見えるからである。べつに、ヘラジカが棲んでいるわけではない)には、次のような哺乳動物が棲んでいる。アナグマ、イノシシ、キツネ、タヌキ、テン、イタチ、ノウサギ、アカネズミ、モグラ、ヒミズ」というのだ。これらの動物たちとの遭遇は、意外性に満ちている。そして、なぜかユーモラスなのだ。