榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ススキを大切にし、花を追いかけない庭づくり・・・【山椒読書論(508)】

【amazon 『ポール・スミザーのナチュラル・ガーデン』 カスタマーレビュー 2015年1月28日】 山椒読書論(508)

ポール・スミザーのナチュラル・ガーデン』(ポール・スミザー、日乃詩歩子著、宝島社)によって、ポール・スミザーの庭づくりの基本姿勢を、より深く理解することができた。

ポールの庭づくりには独自のポイントがいくつかあるが、私には、「ありふれていて、見慣れた植物、とりわけススキを大切にする」と「花を追いかけない」が強く印象に残った。

「イネ科の植物がたくさん光に透けたり、風に揺れる、そんな光景が好き」だというのだ。「ススキは日本原産の植物だ。日本が世界に誇る素晴らしい植物なのだ。『日本に自然に生えている、こんなにいい植物を利用しないのはもったいないよね。ススキというと和風のイメージがあるかもしれないけれど、植え方によって洋風にもなる。どんなにありふれていて、見慣れた植物でも植え方、組み合わせひとつで印象が変わるんだよ』」。「イネ科の植物や、原種系の宿根草類を使うポール独特の植栽は、定評がある。17歳のポールを魅了した日本のススキが原点にある」。

ポールは、「花ばかり意識しない。花はおまけに咲けばいい。花中心にしないで作ると庭はだんぜん楽しくなる」とも語っている。「『植物も、花の咲いていない時間の方が長いんだよね』。咲き続ける花も、人間もいない。『花ばかり意識しないで庭を作るとだんぜん楽しくなるよ。花を追いかけすぎると疲れてしまう』。花を中心にしなくてもいい。花がひとつも咲いていない日があってもいい。植物全体の色や形を楽しめるように、そして時と共に変わる植物の姿をずっと楽しめるように、ポールは植栽する」。

本書は、ポールの庭づくりの哲学と、日乃詩歩子の文章力の見事な融合物である。