榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

77歳の老人が41歳の美女から声をかけられたら――何とも羨ましい物語・・・【山椒読書論(526)】

【amazon 『黄昏流星群(3)』 カスタマーレビュー 2020年1月18日】 山椒読書論(526)

コミックス『黄昏流星群(3)――星よりの使者』(弘兼憲史著、小学館)に収められている「星よりの使者」は、年寄りには何とも羨ましい物語である。

大会社の部長の江口、49歳と、銀座のクラブのママ・谷村緋紗子、41歳とは、不倫関係を10年間も続けている。ある日、江口が緋紗子に、最近めっきり老け込んで元気がない、自分の堅物の父親・江口克彦、77歳を誘惑してくれと持ちかける。「勿論これはゲームだよ。美女から声をかけられたら、心が動揺して元気を取り戻すかもしれない」。

緋紗子と克彦は、デイトを重ね、体も重ねてしまう。克彦はがんがん元気になっていく。「(父と)別れてくれないか」。「何よォ、誘惑してみろって言ったのはあなたじゃない」。「確かに俺がけしかけたことだけど・・・まさかこんなことになるとは夢にも思わなかった」。「でも、もう手遅れよ。私、本気であなたのお父さんに惚れちゃった」。

クラブを閉めた緋紗子は、克彦と正式に結婚し、二人は幸せな日々を送る。

結婚から3カ月後――暖かい日の昼下がり、公園のベンチに並んで腰かけている二人。「わしにとって今、あんたが一番大切で・・・何と言ったって、わしの妻じゃないか」。話し合っているうちに、「眠くなってきた・・・」。「ヒザ枕してもいいわよ。どうぞ」。「あー、いい気持ち」。つい眠ってしまった緋紗子は、その間に克彦が天国に旅立ってしまったことに気づき、泣き続ける。

克彦の葬儀を終えて、財産は何も要らないと、「はい、これ・・・あなたにあげる。お父さんが書いた遺言状・・・」。緋紗子から遺言状を受け取った江口は、思いがけない行動に出るのである。