榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

大学で同期の3人の女性の卒業から30年後の物語・・・【山椒読書論(533)】

【amazon 『黄昏流星群(36)』 カスタマーレビュー 2020年1月25日】 山椒読書論(533)

コミックス『黄昏流星群(36)――惑星同期会』(弘兼憲史著、小学館)では、1979年に東京の四谷大学を卒業した同期の3人組――奥田今日子、高部亜希、村江香織の30年後が描かれる。

今日子は広告制作会社、アドバ・クリエイト社長、香織はフリーライターでムラエオフィス社長、亜希は電力会社、新エネルギー開発の広報部長――というポストに就いている。

「卒業から30年経ったけど、この中に幸せな女いる?」。「いないわよ、3人とも名字が変わってないし」。「もう52よ、何やってるのかしら、私達・・・」。「卒業した時はみんな人生にワクワクしてたから惑星同期会って名前つけたのに、今は『惑う』の惑星だわ」。「ホント、ホント」。

不倫を香織は20年以上、亜希は7年続けている。今日子は最近の15年間は男性と寝ていない。

その後、それぞれに、それはもう、いろいろなことがあって・・・。

香織からのメール。「提案があるの。次の惑星同期会は9月の『月のない夜』に集まらない? 降るような星空の元で3組のカップルが楽しいひと時を過ごす・・・。そして別々に帰る。そのあと(その気があれば)私達の方からプロポーズするの。女の方からするなんて、私達らしいと思わない? 成功するか失敗するかどっちかだと思うけど、どっちになっても、それも人生、そんな人生を楽しもうよ。どうかしら、この企画?」。ある事情で、次の惑星同期会は中止となったが、それぞれがプロポーズを実行することに。

香織の言葉。「巻田さん、聞いて!! 生活が(経済的に)大変になっても、私は愛する人が側にいてくれるだけでとても幸せ、仮に私の相手がアラブの石油王とかビル・ゲイツのような大金持ちでも、その人を好きでなかったら、全然幸せじゃないわ。あなたがこんな状態になったのは私にとって少し幸せ・・・。なぜなら、ずっと側にいてくれるから。もうこれで夜遅くまで飲み歩くこともないでしょう。ギャンブルに行くこともないでしょう、女遊びもしないでしょう。女性にとっては、いつも横にいてくれる人が一番好きな人なのよ。あなたが奥さんと別れた今、やっと、この言葉が言える。私と結婚しよう」。「わあッ」。「あなたが動けなくなってもウンコまみれになっても、私がずっと側にいてあげる。だから一緒になろう」。「こんな俺のどこがいいんだ・・・」。「私にもわからない、どうしてだろう。好きすぎて、頭がおかしくなりそう」。

こういうハッピー・エンドは許せるなあ。