榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

日本語の微妙なニュアンスの違いが分かる本・・・【情熱的読書人間のないしょ話(143)】

【amazon 『ちがいがわかる対語使い分け辞典』 カスタマーレビュー 2015年8月15日】 情熱的読書人間のないしょ話(143)

女房が庭で収穫したショクヨウホオズキの実を持ってきたので、食したところ、ほんのりと上品な甘みがありました。

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閑話休題、似通っていて紛らわしい日本語の使い分けを知りたいとき、すっきりと答えが得られる本があります。『ちがいがわかる類語使い分け辞典』(松井栄一編、小学館)です。

以下に挙げる例を見れば、なぜすっきりするかが分かるでしょう。これほどユニークで行き届いた類語辞典には出会ったことがありません。

「はなす――離す・放す・放つ・隔てる」は、こう説明されています。「基本の意味:間を置いた状態にする」。「Point!;『離す』『放す』はもともと同じ語で、くっついている状態を解除する意が基本。ぴったりくっついた状態にあるものを別々にする意や、間をあける意では『離す』、つかんだり握ったりしているのをやめる意や、自由に動けない状態にあった人・動物や物体をそこから離れるに任せる意では『放す』と書かれるが、境目がはっきりしない場合もある。『放つ』は、対象を能動的に遠くへやる意が基本。対象が離れて行くに任せる意の『放す』に対して、主体が能動的・積極的に対象をよそへ向かわせる場合にいい、光・におい・音などを発する意にも及ぶ。『隔てる』は、空間的・時間的に距離を置いたり、間に仕切りを設けたりする意」。その上、「Point!」の内容の理解を助けるために、それぞれの語の相互の位置関係と重なり具合が図で示されています。さらに、「使い分け」が「表現例」を挙げて具体的に解説されています。

「さくせい――作成・作製・制作・製作・製造」の「Point!」は、こうなっています。「『作成』は主に文書や文案・プランなどに、『作製』は道具・機械などの物品や図面・印刷物に、『制作』は美術作品や映画・演劇・放送番組などに、『製作』は道具や機械、また『制作』と同じく映画・演劇・放送番組などについていう。『製造』は、原材料を加工したり、部品を組み立てたりして作ることで、大量に作ったり商品として作ったりする場合にいう」。

「こうか――効果・効き目・効能・効用・効力・効験」の「Point!」は、こんなふうです。「『効果』は、ある行為や作用によって現れる、望ましい結果。『効き目』は、特に実感として確認されるような効果。『効能』『効用』は、ある効果を期待される働きや作用そのもので、『効能』はその物のもつ働き、『効用』はどのような役に立つかという観点からみたその物事の働きをいう。『効力』は働きや作用のもととなる力。『効験』は『効果』の意の文章語で、現在では薬や祈祷などの働きに限って使われる」。

「しばる――縛る・くくる・束ねる・絡げる」には、犬を繋いだ紐を電柱に「縛る」図、自転車の荷台に物を「くくる」図、読み終わった新聞紙を「束ねる」図も添えられているという行き届きぶりです。

「おさない――幼い・いたいけ・いとけない・幼稚」の図は、左端が「+」で上がり、右端が「-」で下がっているシーソーが描かれ、左方に笑っている赤ちゃんが、右方には漫画を読んで笑っている大人の男が乗っています。そして、左から「いとけない」「いたいけ」と来て、真ん中に「幼い」、右に向かって「幼い」「幼稚」が位置づけられています。

この本が手許にあれば、自信を持って文章を書くことができること、請け合いです。