榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ウイルスは生物であり、他生物の進化に貢献してきたという仮説・・・【情熱的読書人間のないしょ話(356)】

【amazon 『ウイルスは生きている』 カスタマーレビュー 2016年4月17日】 情熱的読書人間のないしょ話(356)

我が家の総苞が赤いハナミズキが咲き始めました。庭の片隅では、紫と白のコントラクトが美しいオダマキ、桃色の花の萼が袋状に膨らんでいるフクロナデシコ、淡紫色のミヤコワスレが花を付け始めています。桃色のクルメツツジは満開です。隣家の黄色のジャスミンも満開で、仄かな芳香を漂わせています。

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閑話休題、『ウイルスは生きている』(中屋敷均著、講談社現代新書)には、重要なことが2つ書かれています。

第1は、ウイルスは生物か非生物かという問題に、著者なりの結論を出していることです。生物学者の多くはウイルスを生物とは見做していませんが、著者はウイルスは生物だと主張しています。

「ウイルスの結晶化実験からすでに80年の時が過ぎたが、その『結論』に変化の兆しが現れ始めたのは、21世紀になってからのことである。近年、急速に発展したゲノム科学の成果は、驚くような新しい発見を次々ともたらしたが、それらの発見の中でウイルスに注がれる科学者の眼差しも実は少しずつ変わりつつある」。

第2は、ウイルスがヒトを含む他生物の進化をもたらしたというウイルス進化説の証拠が集まってきていると指摘していることです。

「今から15年ほど前、2000年の『ネイチャー』誌に驚くべき論文が掲載された。それは、この『合胞体性栄養膜』の形成に非常に重要な役割を果たすシンシチンというタンパク質が、ヒトのゲノムに潜むウイルスが持つ遺伝子に由来すると発表されたのだ。その後、マウスやウシといった他の哺乳動物でも、多少の違いはあるものの同様のことが相次いで報告された。胎児を母体の中で育てるという戦略は、哺乳動物の繁栄を導いた進化上の鍵となる重要な変化であったが、それに深く関与するタンパク質が、何とウイルスに由来するものだったというのだ」。

「より進化的に重要なのはこのシアノファージが持つ光合成関連遺伝子が、シアノバクテリアのような海洋の光合成生物の進化に役立ってきたという点である。その一つが直接的な水平移行(通常、遺伝子は親から子へと受け渡されていくが、これとは異なり、同時代に存在する他種の生物同士間で遺伝子がやり取りされること)であり、ファージを介して光合成関連遺伝子が、異なったバクテリア種に移行したと考えられる例が見つかっている。・・・光合成細菌の光合成遺伝子がウイルスの遺伝子と部分的に混ぜこぜのキメラとなることで、遺伝子進化が加速されてきたようなのである。ウイルスが宿主遺伝子を保有している例は珍しくないが、これはその新しい進化的意義を示唆する興味深い話である」。

「ウイルスが関連した『遺伝子を水平移行するためのオルガネラ』のようなもの(=GTA<Gene Transfer Agent>)が、本当に存在していることが近年明らかになっている」。

「進化の中では他の生物との合体や遺伝子の交換を繰り返すようなごった煮の中で、生命は育まれてきた」。

1991年に『新・進化論が変わる――ゲノム時代にダーウィン進化論は生き残るか』(中原英臣・佐川峻著、講談社・ブルーバックス)の旧版を読んで以来、ウイルス進化説の信者となった私としては、本書の著者がよくぞここまで言ってくれたと快哉を叫びたい気持ちです。

進化に関心を持つ者には、見逃せない一冊です。