榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ハイデルベルクを背景とした、公子と居酒屋で働く娘の悲恋物語・・・【情熱的読書人間のないしょ話(437)】

【amazon 『小説 アルト・ハイデルベルク』 カスタマーレビュー 2016年6月30日】 情熱的読書人間のないしょ話(437)

散策中にゴマダラカミキリ、交尾中のヤマトシジミ、ネジバナを見つけた女房は、「今日は収穫があったわね」と鼻高々です。ゴマダラカミキリを見たのは随分久しぶりです。モンシロチョウ、ショウジョウトンボ、シオカラトンボもカメラに収めることができました。あちこちで、アズマモグラが巣の外へ排出した土が盛り上がっています。ヤマモモの実と葉が一面に落ちています。生っている実を食べてみましたが、未だあまり甘くありませんでした。因みに、本日の歩数は10,596でした。

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閑話休題、『小説 アルト・ハイデルベルク』(ヴィルヘルム・マイヤー=フェルスター著、番匠谷英一訳、角川文庫。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)は、私にとって、ほろ苦い味がする青春の書です。

ドイツ・ザクセン地方のカールブルク公国の公子、20歳のカール・ハインリヒがハイデルベルク大学に留学した時のことですが、下宿兼居酒屋で働く明るい17歳の娘、ケーティと親しくなります。しかし、3カ月後、伯父・大公の病気が重くなり、跡を継ぐため故郷に呼び戻されてしまいます。

身分違いの悲恋を描いた甘ったるい純愛物という悪口もありますが、こういう青春の書があってもいいのではないでしょうか。

若い時に、ハイデルブルクを訪れたことがあるのですが、ここでカールとケーティが語り合ったのかといささか興奮したことを懐かしく思い出します。

その時、登ったハイデルブルク城は古城の雰囲気を湛えた魅力的な城でした。本作品には、お付きの教育係とハイデルベルク城に登った時のカールの幸せな気持ちがこのように描写されています。「彼がこれまでこんなに幸福だったことがあったろうか。いや、けっしてけっして。いろんな印象が、昨日も今日も、彼に向かって押しよせてきた。それにはいかなる雑音も、まざってはいなかった。すべては調和的に、ただ一つの幸福の諧音となって鳴りひびいているのである。――ケーティ、自由、ハイデルベルク、ネッカー川、城、春、黄金色の未来――ただ一つの歓びの流れ、ただ一つの陶酔となって」。