榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

絵本とは、「大人が子供に読んでやる本」だ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(769)】

【amazon 『松居直と絵本づくり』 カスタマーレビュー 2017年6月1日】 情熱的読書人間のないしょ話(769)

小学2年生を対象とする読み聞かせヴォランティアで、『きらめく船のあるところ』を読みました(前回は3組、今回は1組)。校庭で、ホタルブクロが赤紫色の花を下向きに咲かせています。散策中に、アカボシゴマダラを見つけましたが、春型なので後翅に赤い紋がありません。キンシバイの黄色い花に見とれていたら、その家の男性が挿し木にするようにと蕾の付いている茎を数本持たせてくれました。別の場所で、キンシバイと同じオトギリソウ科のピペリカム・アンドロサエマムの黄色い花と桃色の実を見かけました。コバノズイナが白いブラシ状の花をぶら下げています。ナスが紫色の花と実を付けています。女房が挿し木したキンシバイが、もう花を咲かせています。アジサイの色が濃くなってきました。因みに、本日の歩数は10,441でした。

松居直と絵本づくり』(藤本朝巳著、教文館)は、読み聞かせヴォランティアをしている私にとって、興味深い一冊です。

私がこれまで読み聞かせで読んだ絵本の中でとりわけ気に入っている『かさじぞう』『ももたろう』『ちいさなねこ』などが、松居の手になる作品だからです。私が初めての読み聞かせで手にしたのが、読み聞かせの先輩が薦めてくれた『ちいさなねこ』でした。

本書には、松居の絵本の作り方や絵本論が凝縮しています。絵本作りに対する松居の基本姿勢が3つ挙げられています。①一つの物語で一冊の絵本(物語性の重視)、②一人の画家で一冊の絵本、③子供の人間としての骨組みを作る絵本。

物語絵本について。「物語というのは、通常『はじめ』があって『おわり』があります。その『はじめ』と『おわり』の間に、主人公、仲間や脇役、また敵役などが登場し、互いに関係し合い、さまざまな出来事を引き起こします。その出来事は、まさに私たちの人生でよく起こることであり、また生活の一場面であって、読者は物語として語られる事柄の展開に一喜一憂したり、はらはらどきどきしたりして楽しむのです。これが物語の原理です。こうした物語伝達の基本パターンは、大人向けであっても子ども向けであっても、また形式がリアリズムであってもファンタジーであっても、さらに表現の仕方が絵本のように短いものであっても、小説のように長い読み応えのあるものであっても、共通しているといえます。そして、物語の書き手は、いかに読み手を惹きつけ、読者の心を動かすような出来事を描くかを工夫するのです」。

松居が作った石井桃子文、横内襄絵の物語絵本『ちいさなねこ』について。「(松居が)『出発―帰還型』の物語を何冊も刊行してきたのは、冒険を通して登場者だけでなく読者である子どもも一緒に心豊かに成長してほしいということと、最後には帰ってくる物語を読むことで得られる安心感と満足感を、親子でたっぷり味わって幸せになってほしいという願いがこめられています。それは、松居直という編集者が、子ども読者が何を欲するか、そして何が必要かを熟知していたからであり、そしてなによりも、子ども読者の成長を思いやる豊かな心があったからであるといえましょう」。

水墨画のような独特の画風に惹きつけられる、私の大好きな絵本作家・赤羽末吉について。「一人の作家が生まれるには、また一冊の作品が誕生するには、それなりの理由があります。絵本作家、赤羽末吉の場合も、彼の最初の作品『かさじぞう』が生まれるまでのさまざまな経緯や、彼の想いを知ると、その作家の特質や作品の本質に関わることが見えてきます」。「松居氏は最初の出会いで、赤羽さんを『本格的な絵の世界を持っている人』と認め、その結果、絵本作家赤羽末吉が誕生したのでした」。

でき上がったばかりの『かさじぞう』の原画を見た時、松居はこう語っています。「・・・感心した。実に雪の感じがよくでている。実に昔話の物語の世界をよくとらえている。水墨という表現と和紙の素材の白がうまく調和し、水気をたっぷり含んだ雪の感じが見事にえがき出されている。場面設定も適切である。・・・人物の動きも素朴な中に豊かな表情がある。稚拙なようでいて実にうまい・・・霏々と降る雪、風にまう雪片、ぼたん雪。雪の降り止んだつかの間を感じさせるような場面。雪の降る音にならぬ音が聞こえるようだ、雪が生きている」。

松居の絵本論について。「今、私たちがやらなければいけないことは、『子どもに絵本を読ませること』ではないのです。『読んでやること』です。『自分の声で子どもに読んでやる』。私は絵本というのは子どもに読ませる本ではなくて、『大人が子どもに読んでやる本』だという編集方針で絵本を作ってきました。なぜかといいますと、読んでやることによって子どもの中に言葉が生きるんですね。知識や情報を伝えるだけではだめなのです。子どもの中に、この読んでくれている人が、どういうことを感じているか、今どういうことを自分に伝えたいと思っているのかが、文章と絵と、その手で開いたり閉じたりする行為を通して伝わってくると、それが子どもが成長した時に生きる力になるのです」。この絵本論には驚かさられると同時に、読み聞かせの大切さを再認識させられました。