榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

人類の祖先に当たる類人猿は、アフリカでなく、ヨーロッパで進化した・・・【情熱的読書人間のないしょ話(919)】

【amazon 『人類の祖先はヨーロッパで進化した』 カスタマーレビュー 2017年10月23日】 情熱的読書人間のないしょ話(919)

昨晩は、台風接近の中、東京・杉並の西田小学校の同期会に参加しました。懐かしい思い出話で盛り上がり、たちまち小学生時代に戻ることができました。共に老いるということは、連帯感に繋がります。今日は、久しぶりの太陽を浴びながら散策を楽しむことができました。イトラン(ユッカ)が釣り鐘状の白い花を鈴生りに咲かせています。直径12cmほどもあるキノコを見つけました。因みに、本日の歩数は10,452でした。

閑話休題、『人類の祖先はヨーロッパで進化した』(デイヴィッド・R・ビガン著、馬場悠男監訳・日本語版解説、野中香方子訳、河出書房新社)では、意外な仮説が展開されています。

人類がアフリカで進化しただけでなく、その祖先に当たる類人猿もアフリカで進化したと思い込んでいたのに、この著者は、確かに類人猿はアフリカで誕生したが、ヨーロッパに移り、そこで進化し、その後にアフリカに戻ったと主張しているのです。「著者のビガンは、およそ1700万年前からヨーロッパにすんでいた類人猿が、後の人類の基盤となる特徴を発展させ、1000万年前頃にアフリカに移動し、人類の祖先になったという仮説を提唱している。それは、アフリカで進化した類人猿が人類の祖先となったという通説とは異なるが、著者の数多くの実地調査と化石研究に裏付けられていて、検証に値する魅力的な仮説である。もちろん、著者は通説に関しても十分に説明していて、最終判断は読者にゆだねている」。

「ヨーロッパ最古の大型類人猿は、オークの森にすんでいたドリオピテクスである。ドリオピテクスは、(チャールズ・)ダーウィンが『種の起源』を出版する3年前の1856年に、フランスの著名な古生物学者、エドゥアール・ラルテが記載した。ダーウィンは、ラルテが記載したドリオピテクスがアフリカの類人猿と人類の祖先かもしれないと(『人間の由来』<1871年>の中で)述べている」。

「中新世は現代より地球の気温が高く、それは、類人猿をアフリカからヨーロッパへ拡散させた要因の一つだ。中新世の中期を過ぎると、約1700万年前から1500万年前頃まで続いていた温暖期は終わり、次第に気候は寒冷化し、乾燥するようになった。最初、ヨーロッパの類人猿は気候の変化に適応したが、この気候変化が、体幹直立と懸垂行動という新たな進化を引き起こしたのかもしれない。中新世初期の類人猿に比べて脳が大きくなり、子どもの発育スピードが変化したことも、気候変化が原因だと考えられる。だが900万年前になると、ヨーロッパの気候は季節変化のある、寒冷で乾燥したものになり、類人猿はそこでは生きられなくなった。その主な理由は、ほとんどの類人猿が、年間を通して果実が豊富に得られる環境に頼っていたことにある。寒い冬のある温帯ではそういうわけにはいかない」。

「中新世後期の大型類人猿の化石がアフリカではまだ見つかっていない、という事実とは別に、明らかに大型類人猿の系統と親類関係にある類人猿がユーラシアにいたことについて、人類の祖先系統がヨーロッパで誕生したという以外の、説明ができるだろうか。人類の祖先系統がヨーロッパで進化せず、アフリカで進化したのであれば、なぜヨーロッパに、1250万年前からアフリカ類人猿がいたのだろう。それらがすべて、アフリカで生まれた大型類人猿の系統の支流にすぎず、アフリカの本流は発見されるのを待っている、などということがあり得るだろうか。その込み入った仮説について教えてほしい。言い訳なしに」。

「ユーラシアに大型類人猿の形態の証拠が山ほどあるのに、人はなぜそれを無視し、ダーウィンが予見した、すべてはアフリカで進化したという世界観に反する類人猿の骨格の形態について、どれもこれも成因的相同の結果なのだと言い張るのだろう(もっともダーウィンは、ヨーロッパのドリオピテクスがアフリカ類人猿とヒトの祖先かもしれないとことわっている)。1250万年前にヨーロッパで最初に姿を現した類人猿は、多くの属や種となって900万年ほど前まで生き残った。この間、アフリカにはアフリカ類人猿の存在を裏付けるような、説得力ある証拠は皆無だ。そして、ヨーロッパの化石記録から姿を消して200万年後に、アフリカ類人猿は人類の祖先となってアフリカに現れた。わたしはこの200万年の長い空白を埋めることを切望している」。

「アフリカ類人猿から生まれた2つの系統、チンパンジーとゴリラは、気候が比較的安定した森に残った。生息地が次第に乾燥し、モザイク状の複合環境になり始めると、ヨーロッパの四季の変化が大きい環境で進化した一部のアフリカ類人猿は、さらに多様になった環境に行動範囲を広げることができた。これらが人類の祖先となった」。

「人類が700万年前より以前には現れなかったのは興味深いが、その後は続々と姿を現すようになった」。

知的好奇心を激しく揺さぶられる仮説です。