榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

真っ暗なクレバスに転落し、救助隊員を制止して死んでいった女性隊員・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1121)】

【amazon 『秋谷豊詩集――新編』 カスタマーレビュー 2018年5月18日】 情熱的読書人間のないしょ話(1121)

植物観察会に参加しました。タイサンボク、ガマズミ、イボタノキの花が咲いています。ムラサキシキブの蕾、ウグイスカグラの実が見つかりました。キショウブ、オオニワゼキショウ、イ(イグサ)が花を付けています。カニツリグサ、クサヨシ、アゼナルコ、ミコシガヤの穂が揺れています。ユウゲショウ。ブタナ、ヘラオオバコの花が咲いています。オヘビイチゴの花と実(赤くならない)が見つかりました。ヘビイチゴが群生し、赤い実を付けています。因みに、本日の歩数は12,684でした。

閑話休題、詩人・秋谷(あきや)豊の「クレバスに消えた女性隊員」という詩を読みたいと念じながら、なかなか叶わなかったのですが、遂に、本日、目にすることができました。

秋谷豊詩集――新編』(秋谷豊著、土曜美術社・日本現代詩文庫。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)に収められていたのです。なお、『秋谷豊詩集』(秋谷豊著、土曜美術社・日本現代詩文庫)には収録されていません、念のため。

「クレバスに消えた女性隊員」は、詩というよりも現場報告のような趣の作品です。

「京都山岳会登山隊の白水ミツ子隊員が、第一キャンプからベースキャンプへ下山中、ボゴダ氷河のヒドン・クレバスに転落、死亡したのは、一九八一年六月十日のことであった」と始まります。

午前十一時二十分の転落は「直ちに第一キャンプに緊急連絡され、第二キャンプからかけつけた救助隊員が現場に到着したのは十三時十分。彼女の生存は確認された。宮川隊員がクレバスへの下降を試みる」。

「そこからは氷の壁はまた少し屈曲し、真っ暗で、さらに狭くてそれ以上は下降できない。やむなくザイルの端にカラビナとヘッドランプをつけて降ろす。一〇メートル(上からは二〇メートル)降ろしたところで彼女に達したようだが、彼女自身どうにもザイルをつかまえることが出来ないのか、ザイルはかすかな手ごたえを感じるが、そのまま空しく上がってくる。そういう作業を何度も『しっかりしろ』と大声で彼女に呼びかけながらやっている時に、『宮川さぁーん、私ここで死ぬからぁ―』『宮川さぁーん、奥さんも子供もいるからー、あぶないからぁー、もういいよぉー』という声。かなり弱った声だったが、叫ぶような声だった。彼女自身でもう駄目と判断してのことだろう。まったくやり切れない気持ちだった。声が聞こえてくるのに助けられない。くやしさが全身を貫く」。

「十六時、彼女の声はまったく聞こえなくなった。カメラ助手の新谷隊員、そして当日頂上アタックした山田、大野両隊員もクレバスに降りた。しかし誰も宮川隊員が降りた位置より下には行けず、二十一時ついに救助作業を打ち切った」。

「白水さんは二十九歳、独身だった」と結ばれています。

この詩は、私にとって一番衝撃的な詩になりました。

真っ暗なクレバスで死を覚悟した白水隊員の気持ち、長時間、救助を試みながら果たせなかった隊員たちの無念さはいかばかりだったでしょう。胸が締めつけられます。