榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

血色が悪く、小柄で、がりがりに痩せていて、不器量で、未婚で、誰からも注目されない29歳の女性に、突然、起こったこと・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1219)】

【amazon 『青い城』 カスタマーレビュー 2018年8月27日】 情熱的読書人間のないしょ話(1219)

ジョロウグモの雌の幼体を見つけました。サトキマダラヒカゲを見かけました。カボチャが黄色い花と白い実を付けています。セイヨウカボチャの一種であるシロカワクリ(白皮栗)カボチャのハクシャク(伯爵)カボチャという品種です。我が家の観賞用トウガラシが小さな白い花を咲かせ始めました。因みに、本日の歩数は10,050でした。

閑話休題、私はルーシー・モード・モンゴメリ著、村岡花子訳の『赤毛のアン』(ルーシー・モード・モンゴメリ著、村岡花子訳、新潮文庫)シリーズ全10冊を読み通してしまったほどの「赤毛のアン」ファンだが、アンとは全く異なるヒロインが登場する『青い城』(ルーシー・モード・モンゴメリ著、谷口由美子訳、角川文庫)にも魅了されてしまいました。

「その5月の朝、もし雨が降らなかったら、ヴァランシー・スターリングの生涯はまったく違ったものになっていただろう。・・・夜明けまえ、まだ誰もが眠っている、しんとしたもの寂しい時、ヴァランシーは目が覚めてしまった。よく眠れなかったのだ。夜が明ければ29歳になる独身の女が、未婚女は男をつかまえられない女としかみなされない社会にいれば、よく眠れないことだって時にはあるだろう。ディアウッドの村も、スターリング一族の者も、ヴァランシーをもう希望の持てないかわいそうなオールド・ミスとしか見ていなかった。だが、ヴァランシー自身はまだ、ロマンスがいつかやって来るかもしれないという希望を捨ててはいない。みじめで恥ずかしい気はしたが、ささやかな希望だけは持っていたのだ。しかし、このいやな雨の降る朝、ヴァランシーは、今自分が29歳で、どんな男からも求められていない女だということにあらためて気づき、そのほのかな希望すらどこかへ消えてしまったように思った」と、物語は始まります。

そんなヴァランシーだが、実は、秘密を二つ持っていたのです。「いつもおびえていて、さからうこともできず、言うなりになっているヴァランシーは、現実の生活ではそうでも、想像の世界ではその反動ですばらしい夢の中に住んでいた。スターリング一族の者も、その類縁の者も、そんなことにはまるで気づいていなかったし、とりわけ、母親やいとこのスティックルズはそうだった。だから、だれもヴァランシーが住む家を二つ持っているのを知らない――エルム通りの、醜い、赤れんがの箱みたいな家と、空想の中の『青い城』と。記憶のある限り昔から、ヴァランシーは心の中ではその青い城に住んでいた」。

もう一つの秘密というのは、謎の作家、ジョン・フォスターの本を、家族に隠れて愛読していることです。

「29歳で、一人ぼっちで、だれからも求められず、不器量なうえに、華やかな一族の中で、たった一人ぱっとせず、過去も未来もないようなヴァランシー。過去を振り返ってみても、なんの精彩もなく、単調なものだったと思う。真っ赤に燃えた事件も、気高い紫色の出来事も、まるで思いあたらない。将来を考えてみたところで、このままずっと変わらず、果ては寒々しい枝にしがみついている、小さなしおれた葉っぱのように、寂しい存在になるのがおちだ。女が、自分にはもう生き甲斐――愛も、務めも、目的も、希望も――そのすべてがないと悟った時、彼女を待ちうけているのはつらい死だけだ」。

頻繁に心臓を襲う痛みが気になったヴァランシーは、誰にも告げずに、トレント医師の診察を受けます。そして、後1年の命しかないと告げられてしまいます。「『これまで、あたしはずっと、他人を喜ばせようとしてきて失敗したわ。でもこれからは、自分を喜ばせることにしよう。もう二度と、見せかけのふりはしまい。あたしは、うそや、見せかけや、ごまかしばかりを吸って生きてきたのよ。本当のことを言えるってのは、なんてぜいたくなことなんでしょう! 今までやりたいと思っていたことを全部やるのは無理かもしれないけれど、やりたくないことは、もう一切しないわ。おかあさんがふくれるなら、好きなだけふくれていればいいわ――もう、気にするもんですか。(ジョン・フォスターが言っているように)<絶望は解放、希望は束縛>よ』。(午前3時だが)ヴァランシーは起きあがって、服を着た。不思議な開放感が、次第に高まってきた」。

彼女は、村の嫌われ者、70歳の「がなりや」アベルの家に家政婦として住み込み、アベルの死にかけている娘シシイ・ゲイの看病に心を尽くします。「ヴァランシーは、シシイを一層強く抱きよせた。突然、幸せで胸が一杯になった。ここには自分を必要としている人がいる――自分が世話をしてやらねばならない人が。自分はもう余計者ではないのだ。過去のことは一切消え去った。何もかもが新しくなったのだ。『だいたいのことは、神さまが決めてくださっているもんだ。だが、中にはとてつもない幸運もあるもんだて』。がなりやアベルは部屋の隅でパイプをふかしながら、満足そうだった」。

アベルと気が合う、ずっと年下の友人バーニイ・スネイスがおんぼろ車に乗ってアベルの家にやって来ました。アベル以外の村人とは一切付き合わないスネイスは、数々の恐ろしい噂――金を使い込んだ銀行員で貨幣偽造者で不信人者で殺人犯で逃走中の男――に包まれた、これまた村の嫌われ者でした。

「一瞬、バーニイ・スネイスは目を見張った。この妖精のような娘が、2分まえ、ここに立っていた、小柄ないかにもオールド・ミスらしい女と同一人物なのだろうか? このみすぼらしい草ぼうぼうの古い庭で、不思議な魔法が行われたに違いない」。

この後、ヴァランシーに起こったことは、ヒ・ミ・ツです。しかし、その道のりは平坦ではなく、どんでん返しが何度も待ち構えていることだけはお知らせしておきましょう。