榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

憲法を、メディアのあり方を、若者のメディア離れを考える・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1248)】

【amazon 『憲法が変わるかもしれない社会』 カスタマーレビュー 2018年9月23日】 情熱的読書人間のないしょ話(1248)

散策中、ボッグセージ(サルビア・ウリギノーサ)の花で吸蜜しているクマバチ(キムネクマバチ)を見つけました。イチモンジセセリも吸蜜しています。あちこちで、ヒガンバナ、シロバナマンジュシャゲが咲き競っています。明日は中秋の名月だが雨予想なので、今宵の月をと思ったのですが・・・。因みに、本日の歩数は10,434でした。

閑話休題、『憲法が変わるかもしれない社会』(高橋源一郎編著、文藝春秋)は、憲法をテーマとする、高橋源一郎と6人の識者との対談集です。

とりわけ個人的に印象深いのは、国谷裕子との「『分断』が進む時代におけるメディアリテラシー」です。

メディアのあり方について。「●高橋=国谷さんは29年間のキャスター人生の中で、『クローズアップ現代』のキャスターを23年間務められた後、2016年の3月に降板されました」。

「●国谷=NHKの内部から何かを言われたり、外部から指摘を受けるというような経験は私自身にはありませんでした。ところが私が番組を離れる2、3年前頃から、ひとつの番組の中でも賛成・反対の意見、それぞれを公平に伝えるべきだという風が外から吹き始め、NHK内部の空気にも変化が起きてきました。議論のあるテーマについて両方を並列的に伝えなければならなくなってくると、今度はそれを十分伝えることができないという理由で、そのような議論のあるテーマは番組で取り上げること自体やめようというとても後ろ向きな動きも強まってきました」。

「●国谷=国際社会から見ると、報道の自由度ランキングが2010年に日本は11位だったのが、2017年は72位まで下がっていますので、外から見た時に日本のメディアの状況はオープンでなくなっている、自由ではなくなってると見られていますね。●高橋=そうですね。ただ内部の人たちはそういう状況下でもすごく頑張っている。あまり詳しく言うと当人たちに迷惑かけるので言いませんが、ほんとうに合法的に抵抗していると思います。そして真実を届けたいというジャーナリストの気概をみなさん持っている」。

「●国谷=こういう状況だからこそ、メディアやジャーナリズムは、異質なもの、自分とは異なる人や思想に出会える場を積極的に受け手に提供していかなければならない、そういう機能をいままで以上に持ち続けなければならないとあらためて思います」。

「●国谷=木村(草太)さんは、その対談の中で、『歴史的に見ると、国家は、無謀な戦争や人権侵害、独裁なとによって、人々を苦しめてきました。そうした失敗のリストを憲法という形で定め、失敗を繰り返さないようにしているのだ』と話されています。立憲主義としての憲法のあり方をとても明快に表現されているように思います。それから、先ほど高橋さんも触れられましたが、憲法とは『まったく違う価値観の人と共存しながら政治社会を作っていく試み』であるともお話しになっていました」。全く同感です。

若者のメディア離れについて。「●国谷=特に若い世代の間では、ネットやSNSで情報を得ることが当たり前になって、マスメディアに対する不信が広がる中で、自分が信じられるのは仲間からの情報になりがちです。新聞も読まない、テレビもあまり観ないとなると、共通の情報をベースにした議論が世代や立場を超えてこれからできるのでしょうか。●高橋=確かにそうですよね。テレビを観る層、新聞を読む層も減ってきていますし」。

「●高橋=(『クローズアップ現代』の最終回の)番組で、柳田邦男さんが『若者たちに望むこと』を4つ、説かれていましたね。①自分で考える習慣をつける、②情報を根底にある問題を読み解く力をつける、③多様な考えがあることを知る、④適切な表現力を身につける。これは若者たちだけに望むことかというと違います。全ての人たちに、です。つまり、大人も含めわれわれみんなが自分で考え、情報を読み解き、多様な考えを理解し、表現力を身につけなくてはならないわけです」。これらが実行できない人たちは、哀れなことに時の権力者の言いなりになる道しかなく、結局、国家から苦しめられることになるのです。

「●国谷=本も一冊も読まない大学生が非常に多い中で私が懸念するのは、テレビや報道においても非常に分かりやすい白か黒かを求められる。白と黒のあいだには無限のグレーがあって、そこにこそ大事なことが含まれているのに、パッと検索して回答をすぐ得られることに慣れてしまい、迷いながらさまざまな書物に当たったり、幅広い情報に出会って、無関係と思っていたものが実は関係していることを知ったりするような、思考を練っていくプロセスが欠落している。若い人たちの情報への接し方を見ていると、とても心配になります。・・・●高橋=若者は新聞を読まなくなった、本を読まなくなった、テレビを観なくなった。では何を見ているかというとスマホを見ているわけです。彼らは、スマホでヤフーニュースを見ている。ヤフーニュースって産経からの転載が多いですよね。産経新聞はニュース記事を無料で流して、朝日や毎日は有料コンテンツだとか言ってお金取るから、みんな産経に洗脳されていくわけ(笑)。僕自身、ヤフーニュースをよく見ているから実感があります。確かにいま活字メディアが読まれなくなって、電子版でお金を取ろうとする事情は分かるんですが、その結果、有料の情報自体が読まれなくなっていく。みんな無料のコンテンツに慣れていますから」。朝日と毎日には、読まれる工夫を望みたいですね。