榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

高倉健と謎の養女との関係に肉薄・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1641)】

【amazon 『高倉健――七つの顔を隠し続けた男』 カスタマーレビュー 2019年10月15日】 情熱的読書人間のないしょ話(1641)

女房の手にアキアカネの雄が止まりました。ジョロウグモの雌が張った網に落ち葉が引っかかっています。ジョロウグモでないクモの網に雨粒がびっしり付いています。あちこちからキンモクセイの甘い香りが漂ってきます。帰宅して靴を脱ごうとしたら、ズボンと靴紐にアレチヌスビトハギの実がしがみついているではありませんか。因みに、本日の歩数は11,397でした。

閑話休題、『高倉健――七つの顔を隠し続けた男』(森功著、講談社)は、高倉健の実像に迫ろうという意欲的な試みです。

七つの顔とは、「大物ヤクザがレスペクトする男」、「先祖に祈る男」、「銀幕のプレイボーイ」、「純愛の男」、「長嶋茂雄の親友」、「義理と人情に支配された男」、「謎の養女――心に闇を抱えた男」を指しているようだが、とりわけ興味深いのは、高倉健(小田剛一)と謎の養女・小田貴(たか)との関係です。

「養女・小田貴(本人)は、十数年来、事実上の妻として高倉健と同居してきたという。だが生前、それを知っていた関係者は、ほとんどいない。・・・彼女の存在が浮上したのは、あくまで高倉がこの世を去ってからのことである。高倉健は、最後の女性と呼ばれる(33歳年下の)養女に。いったいどんな顔を見せてきたのだろうか」。

「養女は旧姓を河野(こうの)といった。貴倉良子(たかくらりょうこ)という芸名で、女優やテレビ・レポーターとして活動していた時期もある。いわゆる大部屋女優だ。奇しくも高倉と同じ読み方の芸名だが、ひょっとすると昔からのファンだったのだろうか。彼女はその後、ホテル・ジャーナリストに転身した」。

「実のところ、(高倉の)瀬田の家に彼女が住み始めたのは、2013年前後ではないだろうか。折しも養子縁組もそのあたりである。そしてほどなく、高倉は体調を崩していった。2013年5月、高倉プロの専務だった日高(康。高倉の従弟)と彼女自身の実母が保証人となり、小田貴は養女として、正式に小田家に入籍した。そこから高倉が亡くなる2014年11月まで、わずか1年半しかない」。この養子縁組は、日高以外、高倉の親族の誰にも知らされなかったのです。

「小田貴は親族を排除し、40億円とされる高倉健のすべての資産を相続した」。「あろうことか養女は、その高倉健の遺品を次々と処分し始めるのである」。

「高倉健の豪邸の解体工事が始まったのが、2016年5月のことだ。・・・2017年3月末、再びそこを訪ねると、真新しい豪邸が出現していた。美術館を思わせるようなドーム型の瀟洒な屋根が印象的だ。いうまでもなく、その建築主が小田貴である。彼女は高倉健の急逝後、2ヵ月足らずの12月27日付で高倉プロの代表取締役に就任し、すぐさま赤坂の事務所を閉鎖した。古参の専務(日高)や事務員をクビにして、オフィスを顧問弁護士(野村晋右)事務所に移し、高倉プロの社長としてさまざまなイベントを仕掛けてきた。それだけでなく貴は、高倉健が生前購入していた鎌倉霊園の墓、そばにあった江利チエミとのあいだの水子の眠る墓まで、ことごとく破壊してきた。それは、まるで故人の生きてきた足跡や思い出やその匂いをすべて消し去ってしまいたいから、そうしているかのようにも映る。それは近親者にとって、痛恨の出来事であった」。

「まるで、みずからの手で、国民的映画スターの記憶をすべて消し去ろうとしているかのように映る養女の振る舞い。そこからは、高倉健に対する愛情を感じない。強いて推し量れば、心の底で燃やし続ける瞋恚(しんい)の炎が、彼女を駆り立てているのではない、とすら思える、その怒りは誰に向けられているのだろうか」。

あの世の高倉がこのことを知ったら、どう思うでしょうか。