榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

この世界は本当に3次元なのか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1655)】

【amazon 『宇宙の謎 暗黒物質と巨大ブラックホール』 カスタマーレビュー 2019年10月29日】 情熱的読書人間のないしょ話(1655)

いよいよ、ハロウィーンが近づいてきましたね。

閑話休題、つい先日、千葉・流山市立図書館初石分館の受付担当の江田さん(女性)から、今日入荷したこれは榎戸さんがお好きな分野の本ではありませんか、と差し出された本『宇宙の旅 暗黒物質と巨大ブラックホール』(二間瀬敏史著、さくら舎)には、実に興味深いことが書かれていました。

本書は、宇宙の謎の代表的なものとして、ブラックホール、ダークマター(暗黒物質)、ダークエネルギー(暗黒エネルギー)に焦点を絞り、私たち一般読者にも分かり易い解説をと、工夫を凝らしています。その成果は、とかく難しい宇宙論の理解には欠かせない譬えが絶妙なことに表れています。

●ダークエネルギーは宇宙という舞台を決めているもの、ダークマターはその舞台の中で星や銀河が誕生し、成長するために必要な場所をつくる材料です。そしてブラックホールは星の一生の最期にできる天体の墓場です。
●現在、電子やクォーク、そして光子など20数種類もの素粒子が知られています。それらはおのおのが大きさをもたない粒子だと思っていたのが、じつは小さな小さな1つの弦だというのが超弦理論です。素粒子の種類の違いは「弦の振動の激しさ」、つまり「エネルギーの違い」です。振動が激しいほど、質量の大きな素粒子として観測されるのです。小さな1つの弦からいろいろな素粒子が出てくるので、まるで「打ち出の小槌」です。
●超弦理論では「物質も力を伝えるのも突き詰めれば弦の振動」です。弦と弦がくっついたりちぎれたりすることで、力が伝わるのです。現の振動からすべての種類のフェルミオンもボソンも出てくるので、超弦理論ではすべての力がいっぺんに記述できるのが、なんとなくわかってもらえるでしょう。この力の中にはもちろん重力も含まれていて、これが超弦理論の最大の特徴です。
●この弦が運動する空間は、3次元ではないのです。9次元の空間の中でしか、超弦は存在できないのです。
●超弦理論の弦には「閉じた弦」と「開いた弦」の2種類があります。閉じた弦というのは、輪ゴムのようなものを想像してください。開いた弦とは閉じていなくて、両端のある弦です。
●超弦理論はもともと現を基本要素として出発したのですが、いろいろな次元のDブレーン(=開いた弦の集合体<かたまり>)も弦と同等の基本要素とみなすことができることがわかりました。すると新たに、私たちの宇宙が、「高次元の空間に浮かんでいる、3次元の広がりをもったDブレーンではないか」という考えが出てきたのです。イメージとしては、茶筒のような円筒を思い浮かべてください。茶筒のふたに当たる部分(上端)は平面(=膜)ですね。ここが私たちの3次元空間、すなわちDブレーンです。茶筒のふたは平面ですが、その下の本体内部は縦・横・斜め、その他あらゆる方向に広がることができる高次元の空間です。私たちが3次元以外の余剰空間に気がつかないのは、重力以外の力(電磁気力、強い力、弱い力)が私たちのいるブレーン内に閉じ込められ、ここでしか働かないからです。・・・このような考え方を「ブレーン宇宙論」といいます。
●物理学者の究極の目的は4つの力の統一です。それを阻んでいる障害のひとつは、重力がほかの力に比べてあまりに弱いことです。しかし重力が弱いのは、空間の次元が3次元だと思っているからではないでしょうか。余剰空間があると、ミクロの世界では重力の強さは大きくなり、ほかの力を変わらなくなります。こうして高次元理論では4つの力の統一への道が大きく開けるのです。
●ブレーン宇宙論ではダークエネルギーの存在を仮定しなくても、宇宙の加速膨張が説明できる可能性があるのです。現時点ではここで述べたことは、あくまで可能性の話です。だいいち、本当に余剰空間があるのかもわかっていません。しかし近い将来、加速器(電子・陽子などの荷電粒子を高速度に加速する装置)の実験で余剰空間の存在が確認できる、と考えている研究者も少なくはないのです。もし余剰空間が存在したら、3次元だとばかり思っていた私たちの空間に対する常識は一変してしまうでしょう。