榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

中国がウイグル人たちに行っていること・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1750)】

【amazon 『中国を追われたウイグル人』 カスタマーレビュー 2020年1月29日】 情熱的読書人間のないしょ話(1750)

カワセミの雄、カワラヒワの雄、雌をカメラに収めました。赤いウメ、白いウメが綻び始めています。ボケ、ソシンロウバイも頑張っています。昨日の大雨で、公園のあちこちに大きな水溜まりができています。因みに、本日の歩数は10,953でした。

閑話休題、ウイグル問題を考えるとき、『中国を追われたウイグル人――亡命者が語る政治弾圧』(水谷尚子著、文春新書)は、見逃せない一冊です。

本書には、著者がインタヴューした亡命ウイグル人のケースの中から6件が取り上げられています。「ラビア・カーディル――大富豪から投獄、亡命を経て東トルキスタン独立運動の女性リーダーへ」、「ドルクン・エイサ――『世界ウイグル会議』秘書長」、「アブドゥサラム・ハビブッラ、アブリミット・トゥルスン――イリ事件を語る」、「核実験の後遺症を告発した医師アニワル・トフティ――シルクロードに撒布された『死の灰』」、「グアンタナモ基地に囚われたウイグル人たち」、「トフティ・テュニヤズ――政治犯として獄中にある東大院生」だが、いずれも、中国によるウイグル人弾圧の実態が生々しく語られています。

中国人が「新疆」と呼ぶ地域を、ウイグル人たちは「東トルキスタン」と呼称しています。

「漢族(の公安)が、『ラビア、おまえの民族英雄たちの顔を見ろ!』と言い放ち、私が凍り付いていると・・・彼ら二人は、下半身ばかりが血だらけなのです。・・・酷い拷問を受けたらしく、四肢に力は無く、首も下に垂れ、ぐったりしていました。瀕死というか、二人とも既に死んでいるのではないかと思いました」。

「(19)88年春、ウルムチ大学で『事件』が起こった。『纏頭(イスラム教徒への蔑称)と(同じ学生寮に)住めるか!』『ウイグル男を奴隷に、女は淫売に』『纏頭と豚はこのトイレで大小便をするな』『ウイグル人は新疆から出て行け』等の、ウイグル人を蔑視した漢語の標語が学内の至る所に貼られ、それらは回収されただけで80枚に上ったのである」。

「デモに参加して逮捕され、イリ第一監獄に収監されたアミナという美しい女性がいた。事件当時20歳前後。・・・元収容者によると、彼女は監獄で、拷問を伴う尋問を受けた上に、漢人の公安に集団で暴行され、輪姦されたという。未婚で深い信仰心を持ち、道徳的に正しくあらんと望み、清らかに生きてきた彼女は、正気を失った。精神に異常をきたし、壁などに向かって意味不明のことを言うようになった」。

「中国の新疆ウイグル自治区では、大脳未発達の赤ちゃんが数多く生まれ、奇病が流行り、癌の発生率は中国のほかの地域に比べ極めて高い。それは(新疆ウイグル自治区で実施された)核実験の後遺症である可能性が高いが、中国政府の圧力のためにその事実は公にされず、支援を受けられない患者たちは貧困のため薬を買えず、なす術もなく死を迎えている――」。

「アブルバクルは、『ウイグル人の民衆が、政治や宗教や社会の自由を要求した平和的なデモを、中国共産党は民族分裂主義分子や過激な宗教派閥がおこした反政府暴動だと決めつけ、大勢の若者が投獄され、警察の拷問によって殺害された』と証言する」。

「日本に留学していたウイグル人歴史研究者が、中国の政治犯として逮捕され、新疆の監獄で今も服役している(2007年現在)。彼の妻と子供たちは、刑期満了となる2009年2月を日本で待ちわびている」。

本書によって、ウイグル、チベット、香港、台湾に共通する中国の横暴ぶりが見えてきました。