榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

都々逸の粋な調べに酔い痴れる・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1776)】

【amazon 『26文字のラブレター』 カスタマーレビュー 2020年2月24日】 情熱的読書人間のないしょ話(1776)

カワヅザクラ、ツバキカンザクラ、シュゼンジカンザクラ、コブクザクラ、サンシュユ、マンサク、アカバナマンサクをカメラに収めました。因みに、本日の歩数は10,638でした。

閑話休題、『26文字のラブレター』(遊泳舎編、いとうあつき絵、遊泳舎)には、恋愛を巡る都々逸60作品が収録されています。

「『都々逸』は『どどいつ』と読み、江戸時代の終わりから明治時代にかけて、主に庶民の間で流行した唄のことを指します。俳句が『5・7・5』、短歌が『5・7・5・7・7』であるのに対し、都々逸は基本的に『7・7・7・5』の形式になっているのが特徴です。寄席で三味線を弾きながら唄われるなどして親しまれ、唄い継がれてきたものが多かったため、思わず口ずさみたくなるような独特のリズムを持っています」。

恋に落ちる――。

●飲んだお酒の回らぬうちに早くききたい胸のうち――虎石

●一人笑うて暮らそうよりも二人涙で暮らしたい――詠み人知らず

●及ばぬ恋よと捨ててはみたが岩に立つ矢もあるならい――詠み人知らず

●ままになるなら写真にとって主に見せたい胸のうち――詠み人知らず

●逢うて嬉しや別れの辛さ逢うて別れがなけりゃよい――詠み人知らず

●外は雨 酔いは回ったさあこれからはあなたの度胸を待つばかり――詠み人知らず

恋に破れる――。

●惚れさせ上手なあなたのくせに諦めさせるの下手な方――詠み人知らず

●切れる心はさらさらないに切れたふりする身のつらさ――詠み人知らず

●切れてくれなら切れてもやろう逢わぬ昔にして返せ――詠み人知らず

恋に溺れる――。

●諦めましたよどう諦めた諦めきれぬと諦めた――都々一坊扇歌

●このまま死んでもいい極楽の夢をうずめる雨の音――亀屋忠兵衛

恋に笑う――。

●逢えば笑うて別れにゃ泣いて うわさ聞いては腹立てる――詠み人知らず

●君は吉野の千本桜 色香よけれどきが多い――詠み人知らず

●惚れた証拠にゃお前の癖が みんな私の癖になる――詠み人知らず

●嬉しく別れりゃ未練がのこる おこりゃ逢うまで気にかかる――詠み人知らず

●澄んできこえる待つ夜の鐘は こんと鳴るのがにくらしい――詠み人知らず

●女超男蝶(めちょうおちょう)の杯よりも好いた同士の茶わん酒――詠み人知らず

●顔見りゃ苦労を忘れるような人がありゃこそ苦労する――詠み人知らず

●すねてかたよる布団のはずれ惚れた方から機嫌とる――詠み人知らず

恋こがれる――。

●人の口には戸を立てながら門を細めにあけて待つ――詠み人知らず

●恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす――詠み人知らず

●口で貶して心で賞めて人目忍んで見る写真――詠み人知らず

●逢うて間もなくはや東雲(しののめ)を憎くやからすが告げわたる――詠み人知らず

恋に狂う――。

●恋し恋しと書いては丸め ほかに書く字のないなやみ――詠み人知らず

●惚れて通えば千里も一里 逢わず戻ればまた千里――詠み人知らず

●三千世界の烏を殺し主と朝寝がしてみたい――高杉晋作(諸説あり)

●あの人のどこがいいかと尋ねる人にどこが悪いと問いかえす――詠み人知らず

●惚れられようとは過ぎたる願い きらわれまいとのこの苦労――詠み人知らず

●お前死んでも寺へはやらぬ焼いて粉にして酒で飲む――詠み人知らず

●今別れ 道の半丁も行かないうちにこうも逢いたくなるものか――詠み人知らず

本書には載っていないが、「嫌なお方の親切よりも好いたお方の無理が良い」も、私の好きな都々逸です。

私も真似事がしたくなってしまいました。金も力もいらないけれど主との会話なくちゃ嫌――榎戸誠。