榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

子宮頸がんワクチンを接種すべきか否かを真剣に考えよう・・・【薬剤師のための読書論(27)】

【amazon 『10万個の子宮』 カスタマーレビュー 2018年6月20日】 薬剤師のための読書論(27)

10万個の子宮――あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか』(村中璃子著、平凡社)は、子宮頚がんワクチンの副反応と言われるもので苦しんでいる若い女性とその家族、このワクチンの副反応が恐ろしくてワクチン接種をためらっている若い女性とその家族、ならびに医療関係者にとって必読の書である。

「日本では毎年、子宮頸がんによって3000の命と1万の子宮が失われている。世界では毎年、53万人が新規に発症し、27万人が命を落とすと言われる。けれども今は子宮頸がんを予防するワクチンがあり、世界130カ月以上で使われている。近い将来、ワクチン接種率を上げた国では子宮頸がんは過去の病気となるだろう」。

「2013年4月、子宮頸がんワクチンは日本でも定期接種となった。しかし、わずか2カ月後の6月、ワクチンを打った子を持つ親たちからのわが子に神経の異常を思わせる症状が始まったという訴えを受け、政府は子宮頸がんワクチンの『積極的な接種勧奨の一時差し控え』を決定した。小児科医たちは、子宮頸がんワクチン導入以前から思春期のこうした症状はさんざん見てきたと言った。厚生労働省が集めた専門家による『予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会』も、症状は身体表現性のものでワクチンとは関係のない症状の『紛れ込み』の可能性が高いという評価を下した」。

「それでも、テレビは『ワクチンのせいだ』と訴える少女のけいれんする姿や車椅子の映像を繰り返し流した。周りの大人は、けいれんする少女やうまく歩けない少女を携帯電話で撮影してインターネットへ投稿し、積極的にテレビの取材を受けた」。

「世界中どの国でも。新しいワクチンが導入されればそれに反対する人は必ず出てくる。しかし、日本には、他の国にはない厄介なことがふたつあった。ひとつは、政府がサイエンスよりも感情を優先したこと。もうひとつは、2014年初頭、わざわざ病名まで作って『薬害』を唱える医者たちが登場したことだ。『一時』差し控えが3年に及んだ2016年7月27日、日本政府は、世界で初めてとなる、子宮頸がんワクチンによるという被害に対する国家賠償請求訴訟を起こされた」。

著者は、国家による「積極的な接種勧奨の一時差し控え」が、重大な事態を招くと警告を発している。

警告の第1は、「薬害」を主張する医師たちによって、大量のステロイド剤を静脈点滴する「ステロイドパルス療法」、自己免疫の原因となる自己抗体を取り除きながら全身の血を濾して入れ替える「血漿交換療法」、さらには、慢性の痛みを訴える少女たちの体にメスを入れて脊柱管内(硬膜外)に金属の電極を埋め込み、電流を送ることで痛みを脳に伝える物質を減らし、痛みを軽減させる「脊髄電気刺激療法(SCS)」が行われていること。これだけでなく、症状を訴える少女たちに代替医療、サプリメント、健康食品、宗教などが群がっていること。

第2は、子宮頸がんワクチンの接種率が70%から1%へと急落している現状に鑑み、今後10年間に10万個の子宮が摘出されることになると予測されること。

第3は、日本の現状が子宮頸がんワクチン不安を世界へ拡散させてしまっていること。

「子宮頸がんワクチン接種後の少女の中には『心因性=情動に装飾された身体症状』という診断を受け入れることができず、ワクチンのせいだと不安を募らせて症状を悪化させるケースも多い。そんな少女たちは、大多数の『まっとうな医師』よりも、薬害だと断じ、一緒に戦ってくれる医師や弁護士、自称ジャーナリストなどのカギカッコ付き『支援者』が自分を救ってくれるものと信じる結果につながる。一方、ワクチン不安を抱えた少女は、『薬害を見つけた』と主張することで利得を得る『支援者』にとって、欠くことのできない存在となっている」。

WHOの諮問委員会GACVSが2017年7月14日に出した安全性に関する新たな声明の中で、日本の現状に懸念を示しています。「ワクチンを適切に導入した国では若い女性の前がん病変が約50%減少したのとは対照的に、日本では1995年から2005年で3.4%増加した日本の子宮頸がんの死亡率は、2005年から2015年には5.9%増加し、増加傾向は今後15歳から44歳で顕著となるだろう。・・・2017年、GACVSはシステマティックレビュー(論文をくまなく検索すること)を対象とする7万3697症例についての分析を行ったところ、すべての症状について子宮頸がんワクチンとの因果関係が認められないという結論を得た。しかし、科学的分析とは裏腹に、世界では症例観察に基づく誤った報告や根拠のない主張が注目を集めている」。

子宮頸がんワクチン接種推進派と反対派の主張を客観的に比較検討すると、推進派に軍配を上げざるを得ない。これが、長年、医薬品業界に身を置いた私の結論である。もし、私に娘がいたら、躊躇することなく、ワクチン接種を受けさせるだろう。