突然、自殺した妻のことを何も知らなかった男の決意――老骨・榎戸誠の蔵出し書評選(その291)・・・【あなたの人生が最高に輝く時(378)】
【読書の森 2024年11月28日号】
あなたの人生が最高に輝く時(378)
●『立証責任』(スコット・トゥロー著、上田公子訳、文春文庫、上・下巻)
「3月の終わりに近いあの日の午後遅く、帰宅したアレハンドロ・スターンは、アタッシュ・ケースとガーメント・バッグを手にしたまま、やや上の空で玄関から妻のクララを呼んだのだ」。
『立証責任』(スコット・トゥロー著、上田公子訳、文春文庫、上・下巻)の主人公、敏腕弁護士のスターンは、愛する妻の突然の自殺に直面し、悲しみと疑問の只中に投げ込まれる。
自分は妻の気持ちを本当に理解していたのだろうか。やがて、56歳の男は、妻のことを自分は何も知らなかったのだということを痛切に思い知らされ、自殺の裏に隠されている秘密を自分の手で探り出そうと決心する。
時間が経過しても、古びないミステリの魅力を堪能できる。