榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

『ガリヴァー旅行記』の著者・スウィフトは徹底した厭世主義者だった――老骨・榎戸誠の蔵出し書評選(その309)・・・【あなたの人生が最高に輝く時(396)】

【読書の森 2024年12月16日号】 あなたの人生が最高に輝く時(396)

●『スウィフト考』(中野好夫著、岩波新書)

『ガリヴァー旅行記』の著者、ジョナサン・スウィフトは、悩みと不平、不満の塊とでもいうべき、徹底した厭世主義者であった。自分がこの世に生まれたことを嘆き悲しむあまり、自分の誕生日には喪服を着けて断食したという。

スウィフト考』(中野好夫著、岩波新書)は、読み応えがある評伝である。スウィフトというのは、複雑で、矛盾だらけで、多面的で、とても一筋縄ではいかない人物であるが、中野好夫の筆は、稀代の人間嫌いで皮肉屋であったスウィフトの特異な人間像を巧みに浮かび上がらせている。

私たちの周囲でもたまにスウィフト的な人を見かけるが、本物のスウィフトに比べると、いい人に見えてしまうから不思議だ。なぜかいつも不機嫌な人、しかめっ面をしている人には、恰好の教科書と言えよう。