榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「大草原の小さな家」に住んだことがありますか・・・【山椒読書論(111)】

【amazon 『ローラ・インガルス・ワイルダーの生涯』 カスタマーレビュー 2012年11月27日】 山椒読書論(111)

あなたは、かなり以前に放映されたテレビ・ドラマ『大草原の小さな家』を見たことがありますか? アメリカの西部開拓時代に、厳しい大自然と闘いながら逞しく生きる開拓農民・インガルス一家の物語である。この番組も原作も、アメリカで、そして日本で、一世を風靡したのである。

貧しいながらも楽しい一家に次から次へと難問が降りかかってくるが、「父さん」を中心に全員が心を合わせて乗り越えていく。ここに本物の家族がいる。人間にとって一番大切なものは何か。人間が生きていく上で忘れてならないことは何か。額に汗して日々を力いっぱい生きること。金なんかなくっても心の贅沢は味わえるということ。周囲の人々に対する優しさ、とりわけ、弱い立場の人々への思い遣りを忘れないこと。心の籠もった励ましにどんなに力づけられるかということ。好意の表し方とそれを素直に受け取る方法を学ぶこと。本当の優しさとは何かを知ること。困難な状況の中でも決して希望を見失わないこと。インガルス一家の人たちは私たちに多くのことを教えてくれる。彼らはまさに私たちの「良心」なのだ。

インガルス一家の次女、ローラ・インガルス・ワイルダーが自分の生い立ちと家族のことを書き始めたのは63歳の時だった。「父さん」への尊敬の念がこの本を書かせたという。こうして書かれた『大きな森の小さな家』が思いがけず評判を得たことから、『大草原の小さな家』『プラム・クリークの土手で』『シルバー・レイクの岸辺で』『農場の少年』(いずれもローラ・インガルス・ワイルダー著、恩地三保子訳、福音館文庫)と書き継がれていった。

これらの原作はどれも素晴らしい作品だが、もう一つ見落とせない本がある。ドナルド・ゾカートという人が丹念に資料を集めて、ローラの生涯を再現した伝記『ローラ・インガルス・ワイルダーの生涯』(ドナルド・ゾカート著、小杉佐恵子訳、パシフィカ、上・下巻。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)である。ローラとその家族のことをもっとよく知りたいという人に薦めたい。この本は上・下2冊で一見厚い感じがするが、本来、子供向けに書かれた本なので、自分でも驚くほど速く読めてしまう。子供も含めて家族全員で回し読みしてほしい。