榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

数ある敬語入門書の中で、これが一番・・・【山椒読書論(328)】

【amazon 『スラスラ話せる敬語入門』 カスタマーレビュー 2013年12月9日】 山椒読書論(328)

敬語の本は数多く出版されているが、一冊だけというなら、『スラスラ話せる敬語入門――一目でわかる!! すぐに使える!!』(渡辺由佳著、かんき出版)を薦めたい。

「基本の敬語をマスターしよう」の章で、敬語の基本をまとめて身に付けてしまおう。

例えば、「二重敬語に気をつけよう」では、「地位の高い人には、ついつい気負いすぎて敬語をいくつも重ねてしまうものです。しかし、場合によっては間違った使い方(二重敬語)になってしまうこともあります。たとえば、『社長がおっしゃられたことは、ごもっともだと思います』。これは、『おっしゃる』プラス『られる』と、敬語表現を重ねているので、間違いになります。正しくは、『社長がおっしゃったことは、ごもっともだと思います』です。また、『先生は、すでにお帰りになられました』。これも『お帰りになる』プラス『られる』と、敬語表現を重ねてしまっています。正しくは、『先生はすでにお帰りになりました』です。敬語は、いくつも重ねればよいというものではありません。使いすぎるとかえって間違った敬語遣いになってしまうので気をつけましょう」と、丁寧に優しく指導してくれる。

「よく使われる言葉の尊敬語と謙譲語への変換」、「よく使われる上司や先輩への受け答えの敬語変換」が一覧表にまとめられているので、重宝だ。前者は、例えば、「●普通の表現:行きます、●尊敬語:行かれます。いらっしゃいます、●謙譲語:参ります。うかがいます」、「●普通の表現:います、●尊敬語:いらっしゃいます、●謙譲語:おります」、「●普通の表現:食べます、●尊敬語:召し上がります、●謙譲語:いただきます。頂戴いたします」といった具合である。後者では、「●普通の言い回し・状況:わかりました。了解です、●敬語遣いの表現:承知いたしました。かしこまりました、●ポイント:謙譲語に変える」、「●普通の言い回し・状況:今、いいですか?、●敬語遣いの表現:今、お時間よろしいでしょうか?、●ポイント:『いい』→『よろしい』と丁寧な表現に変える」、「●普通の言い回し・状況:ここにサインしてください、●敬語遣いの表現:こちらにサインをお願いできますか?、●ポイント:『・・・ください』は、目下から言われると命令口調に聞こえるので、語尾を疑問形にすると、やわらかい印象になる」などと説明されている。

「社外の人への言葉遣いはとくに慎重に!」では、「よくある間違った敬語遣い」として、「お客様が申されたことは、ごもっともです」と「所長、○○株式会社の田中専務が参られました」が例として挙げられている。「最初の例は、『申す』という謙譲語に『される』の付け足し型の尊敬表現がついたばかりに、尊敬語と勘違いされて使われています。2番目の例も、『参る』という謙譲語に『られる』の尊敬表現がついて、尊敬語と勘違いされている例です。正しくは、『お客様がおっしゃったことは、ごもっともです』『社長、○○株式会社の田中専務がお見えになりました』です。謙譲語に付け足し型の尊敬表現がついても、尊敬語にはなりませんので、注意しましょう」。この章では、「よく使うビジネス用語」と「来客時の受け答えでよく使う敬語変換」が一覧表にまとめられている。

「状況・シーン別敬語」の章では、さまざまな場面での敬語を実践的かつ具体的に学ぶことができる。

例えば、「上司や取引先など、目上の人の意見に反論したい」場合は、どう言えばいいのか。「お言葉を返すようですが、それは違うと思います」は「×」、「お考えはごもっともだと思います。ただ、○○のような見方もできると思うのですが、いかがでしょうか?」が「○」と解説されている。

「ピンチを切り抜けるマジックワード」の一覧表は、役に立つ。例えば、「●状況を悪化させる言い方:うっかりしていました、●マジックワード:失念しておりました、申し訳ございません」、「●状況を悪化させる言い方:口が滑りました、●マジックワード:考えの足りないことを申してしまいました。配慮のないことを口にしてしまいました」となっている。このマジックワードを覚えておけば、何とか危機を脱出することができるだろう。

「電話の敬語」の章では、日常のビジネスから突発的なクレーム応対まで訓練を受けることができる。

「お付き合いの敬語」を物にすることによって、よりよき人間関係を築くことができるだろう。

「ビジネス文書・FAX・メール・手紙の敬語」に示されているモデルを上手に活用しよう。

本書は、個人用として、ぜひとも身近に置いておきたい一冊である。