長年に亘り、動物たちの幸せな瞬間を追い求めた写真集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(383)】
午前中は水辺生物観察会、午後は撮影勉強会に参加しました。千葉の利根運河では、ニホンナマズ(長い髭が目立つ2匹)、ライギョ(カムルチー)、モクズガ二、クサガメ(4匹)などを観察することができました。これらは観察後にリリースされます。水辺生物に造詣が深い田中利勝氏によれば、利根運河で調査した470匹のカメのほとんどが外来種のミシシッピアカミミガメ(幼体はミドリガメ)と在来種のクサガメで、在来種のニホンイシガメはたった3匹だったそうです。近年、著しく個体数を増やしているミシシッピアカミミガメは目の後ろ部分の赤い紋が特徴です。
閑話休題、『動物たちのしあわせの瞬間 BORN TO BE HAPPY』(福田幸広写真・文、日経ナショナル ジオグラフィック社)は、写真家・福田幸広が長年かけて動物たちの幸せな姿を追い求めた写真集です。
「しあわせいっぱいの笑顔」の章では、森には美味しい食べ物が少なくなってくる11月中旬、ニホンザルが頬袋から何やら取り出して食べている満悦そうな表情が印象に残ります。
「満たされる」の章のニホンリスは、クルミを房ごと上手にもぎ取っていかにも満足げです。
食事を終えて海から帰ってきたキングペンギンが、何度も足を止めてはパンパンに膨れている自分の腹を見詰めるのは、腹を空かせて待っている我が子のために頑張って狩りをしてきたからでしょう。
「ジャングルにすむイケメン集団」の章は、面長で鼻筋が細く、目の上の部分が庇のように飛び出した、彫りの深い顔立ちのクロザルたちが主人公です。
「まどろむ」の章では、母馬の食事中に、ミサキウマの子供が叢に横になって、のんびりと昼寝しているあどけない寝顔のアップが何ともかわいらしいのです。
エゾフクロウの雛たちは、仲良く並んでうとうとと気持ちよさそうにまどろんでいます。
「恋模様」の章は、いささか刺激的です。「ニホンアナグマの恋は少し変わっている。日本にすむ哺乳類でこんなに長い時間交尾をするものは、アナグマをおいて他にない。オスは『ジェジェジェー』と求愛の声を出して、メスを巣穴の外へと誘い出す。それからほぼ丸2日間、少しの休憩を挟むだけで、交尾が続く。オスはメスの首元にかみ付いたまま放さない。かみ付いたまま、求愛の声を出し続ける、タフな動物なのだ」。
「慈しむ」の章では、シロイワヤギの親子の決定的な瞬間がカメラに収められています。「『見て! 跳べるよ!』と自慢げに母の前で大きな岩からジャンプをして見せる」。
著者の動物たちへの熱い思いがひしひしと伝わってくる一冊です。