「論語と算盤」を説いた渋沢栄一の玄孫が勧めるSDGs投資とは何か・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1863)】
ハクロニシキの葉(白色)、カクテル(コクテール。赤色)の花が見頃を迎えています。ナガミヒナゲシ(橙色)、ヒルザキツキミソウ(薄桃色)の花が咲いています。
閑話休題、道徳と経営の合一を説いた『論語と算盤』の著者・渋沢栄一の玄孫・渋澤健は、その著書『SDGs投資――資産運用しながら社会貢献』(渋澤健著、朝日新書)の中で、現代の「論語と算盤」ともいうべき、SDGs(Sustainable Development Goals。持続可能な開発目標)投資を勧めています。「SDGsと投資を結びつけること。渋沢栄一の残した『論語と算盤』を継承する一人として、これこそが私のなすべき仕事だと考えています」。
SDGsは、17の大きな目標を掲げています。①貧困をなくそう、②飢餓をゼロに、③すべての人に健康と福祉を、④質の高い教育をみんなに、⑤ジェンダー平等を実現しよう、⑥安全な水とトイレを世界中に、⑦エネルギーをみんなに そしてクリーンに、⑧働きがいも 経済成長も、⑨産業と技術革新の基盤をつくろう、⑩人や国の不平等をなくそう、⑪住み続けられるまちづくりを、⑫つくる責任 つかう責任、⑬気候変動に具体的な対策を、⑭海の豊かさを守ろう、⑮陸の豊かさも守ろう、⑯平和と公正をすべての人に、⑰パートナーシップで目標を達成しよう――であるが、いささか総花的な印象を受けるのは私だけでしょうか。
「企業がSDGsに取り組む意義とは、『誰一人取り残さない』という人道的な見地、すなわち論語思想の推進だといえます。しかも、SDGsには、論語だけでなく算盤の意義も含まれています。これは、新たな価値観であり、新たな需要を発見するチャンスなのです。日本企業がこれまで得意としてきた経験の積み重ねに基づくフォーキャスティング(予測すること)に、バックキャスティング(逆算すること)の手法が加わるわけです。2つのベクトルを、『と』の力で結ぶことができれば、そこに新たな価値創造が生まれます。SDGsは、ビジネスでの新たなクリエーションをうながす、最善の取り組みです。・・・このように、『論語と算盤』の論語の部分は、SDGsでは『誰一人取り残さない倫理性』、算盤の部分は『新しい需要や価値を見つける収益の探究』に重なります。異なる要素を組み合わせることで、化学反応が起き、大きな目標が成し遂げられる。渋沢栄一の教えには、すでにSDGsを達成するための飛躍が説かれていたのです」。
著者は、自らが推進するインパクト投資を、こう定義しています。「ポジティブな社会的インパクトを意図とし、そのインパクトの持続可能性を支えるために経済的リターンを求める」。そして、インパクト投資の主役はミレニアル世代の若い人々であることをデータで示しています。