榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

岡義武が淡々と描き出した等身大の原敬に親近感を覚えてしまいました・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2228)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年5月20日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2228)

ヒペリカム・カリキナム(セイヨウキンシバイ。写真1~3)の花でホソヒラタアブが吸蜜しています。スイカズラ(写真4、5)、センダン(写真6)、スイレン(写真7)が咲いています。ヨシ原でギョギョシと賑やかに囀るオオヨシキリ(写真8)を撮影しようと1時間ほど粘ったが、ぼんやりとした写真しか撮れませんでした(涙)。我が家の庭では、ガクアジサイ(写真9)、ミヤコワスレ(写真10)が咲き始めました。

閑話休題、原敬について知りたくて、『近代日本の政治家』(岡義武著、岩波文庫)を手にしました。

収録されている「『平民宰相』原敬」から伝わってくるのは、若き原の強烈な自負心と不屈の闘志です。

「原は政友会に参加してから約18年、総裁に就任して約4年で、ついに政友会を率いて政権を担当する日を迎えたのである。顧みれば、ここにいたるまでには起伏・曲折する嶮しい行路があった。越えねばならぬ数々の山川があった。苦難にみちたこの過去は、彼の性格に、また行動様式にいつか変化を生じさせていた。政友会に参加した頃の原は、党内ではとかく自説を固執して論争を辞せず、圭角があって調和性に欠けていた。このようなところは、しかし、その後次第に大きく変った。とりわけ、総裁になってからは別人のごとくなった。彼は自己の意見を強情に主張して遮二無二にそれを通そうとする代りに、温顔に微笑を湛えて他の者の言葉に寛大に耳を傾ける包容力を示すようにいつかなって来た。その変り方は、曽つての彼を知るひとびとをしばしば驚かせた。・・・ことに、政友会総裁に就任して責任を名実ともに自己の双肩に荷い、党勢の拡張に心血を注ぐようになってからは、原は党員をいよいよ熱愛した」。

「彼(原)が死後に残した財産は、その経歴からいってむしろ僅少であった。政党政治家としての原は、こうして、身も心もすべてを挙げて党に献げたというべきであろう」。

「原の最大の長所は当面する問題を臨機巧妙に処理することにあった。この意味では、彼はリアリストであって、いわゆる理想家的なタイプ、主義・信条をもって起つ政治家ではなかった。原の演説は簡潔ですきがなかった。しかし、低声で抑揚にも乏しく、無味乾燥で人に印象を残さなかった。原自身、演説は嫌いだといっていた。彼が理想家的タイプでなく『経綸』の持主でなかったことも、彼をすぐれた演説家に成長させなかった原因と考えられる。しかし、それだけではなくて、リアリストである彼は、当時の現実政治における弁論の役割を評価せず、自己の演説についても関心を払うこと少かったのであろう。原が長じていたのは討論であり、また討論において即座に鋭い応酬をもって相手を圧倒することにあった。議会の本会議や委員会では、彼は討論することをむしろ楽しむ風であったという。これも亦、蘇峰のいう『今日主義』の一つの現われであり、卓越した一種の事務家的タイプであったことにもつらなるものと思われる。政治家としての彼のなお一つの特長は、巧妙をきわめた政治的掛引・策謀にあった」。

岡義武が淡々と描き出した等身大の原に親近感を覚えてしまいました。

また、大学で政治史の講義を受けた時の岡先生の姿を懐かしく思い出しました。