榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

榎戸誠の個人的・出口治明フェスティヴァル(4)・・・【リーダーのための読書論(64)】

【榎戸誠の情熱的読書のすすめ 2015年12月8日】 リーダーのための読書論(64)

現役実業家の中で群を抜いた読書家はライフネット生命の会長兼CEOの出口治明氏だと思う。これまで氏ならびにパートナーの社長兼COOの岩瀬大輔氏の著作には敬服の念を抱いてきたが、このほど、出口氏の講演会を聴講し、直に会話を交わしたことで、氏の温かい人間性を実感することができた。facebookで「友達」になれたことを記念して、敢えて出口氏に断りを入れず、勝手に「榎戸誠の個人的・出口治明フェスティヴァル」をfacebook上で開催することに決めた。第4弾は、「タテヨコ思考こそが、自分の軸を作るための最強の武器・・・【続・リーダーのための読書論(59)】」。

タテヨコ思考こそが、自分の軸を作るための最強の武器

自分の軸、大局観
大局観』(出口治明著、日経ビジネス人文庫)は、薄い文庫版だが、内容は非常に濃い。著者は、日本初のインターネット生命保険会社であるライフネット生命を立ち上げた人物であるが、その考え方と行動を一本の太い心棒が貫いている。

著者は、自分の軸と大局観を持つことの重要性を強調している。「何かが起こったとき、東西南北のどの方向に行けばその組織は生き残れるのかがわかる能力、これを『大局観』といいます。そしてこの大局観の持ち主であることが、リーダーの絶対条件であるといっても過言ではありません。平たく言えば『行きたいところがある』あるいは『やりたいことがある』ということです」。大局観に次いで、メンバーをその気にさせる力――共感力も大事であり、共感力を支えるのは、コミュニケーション力だと述べている。

直感、スピード
直感の精度を高めよ、と言っている。「深謀遠慮や沈思黙考には世間の人が思うほど効果がないことを、経験を通して知っているからです」。この指摘は、私の経験に照らして同感である。「私は『直感で決める』ことを大切にしています。この直感というのは『何も考えずに決める』ことではありません。人間の脳は問題に直面した瞬間、頭のなかに蓄積されている情報を高速でサーチし、最適な答えを導き出すようにできているのです。つまり、脳が最速で必要な情報処理を行った結果が『直感』なのです」。

スピードも重要視している。「思考の時間が短くてすむのは、深く考える訓練ができているからです。(眠り同様)思考も深めれば深めるほど時間をかける必要がなくなるのです。スピードは、その人の生産性を決定づける重要な要因です。同じ量の仕事(≒能力)ならばスピードが速ければ速いほど、相手に与えるインパクトは強まります。『インパクト=仕事量×スピード』なのです」。

タテヨコ思考
大局的にものを見るには、すなわち、木でなく森を見るには、2つの方法がある。1つは、歴史から見るタテ思考で、もう1つは、他の国や地域から見るヨコ思考だというのである。自分の軸を作るには、「現在自分が生活する居心地のいい空間を突き抜けること、そして『歴史というタテ軸』と『世界というヨコ軸』を自分の中にもつことが大切なのです。このタテヨコ思考こそが、自分なりの軸をつくるための最強の武器になるはずです」。

多様なインプット
多様なインプットで直感と論理を磨け、と発破をかけている。「インプットの蓄積を増やしていくと、あるところを境にして、あたかも水槽の水があふれ出るようにラクにアウトプットができるようになる瞬間がきます。そうならないうちはまだまだインプットが足りないのです。『量』と同時に、インプットの『幅』も大切です」。私も経験があるが、この溢れ出る感覚というのは、実に気持ちのいいものである。

次の若者へのアドヴァイスは的を射ている。「長い戦いの中では、どこかの局地戦で負けることがあるのも当然です。だからこそ、『最終的に勝つ』ためにそのときどきで何をなすべきか、それを常に考え、実行していかなければならないのです」。