榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

幸福な家族はどれも似通っているが、不幸な家族は不幸のあり方がそれぞれ異なっている。・・・【山椒読書論(235)】

【amazon 『アンナ・カレーニナ』 DVD『アンナ・カレニナ』 カスタマーレビュー 2013年7月2日】 山椒読書論(235)

作家は書き出しに全神経を集中する。

アンナ・カレーニナ』(レフ・トルストイ著、木村浩訳、新潮文庫、上・中・下巻)の「幸福な家族はどれも似通っているが、不幸な家族は不幸のあり方がそれぞれ異なっている」という有名な書き出しは、レフ・トルストイが17回も推敲に推敲を重ねたと伝えられている。

この長編小説はこれまで多くの訳者によって翻訳されているが、トルストイ苦心の書き出しに限って言えば、どの訳者の訳ももう一つしっくりこない。そこで、己の非力を省みず訳(英語からの重訳)に挑戦してみたのが、上掲のものである。

美貌の人妻アンナの不倫・転落物語と、身近なカップルの着実で幸福な人生を対比させているところに、この作品の尽きせぬ魅力があるのだと思う。

映像で楽しみたい向きには、DVD『アンナ・カレニナ』(ジュリアン・デュヴィヴィエ監督、ヴィヴィアン・リー、ラルフ・リチャードソン出演、ファーストトレーディング)を薦めたい。