幸福な家族はどれも似通っているが、不幸な家族は不幸のあり方がそれぞれ異なっている。・・・【ことばのオアシス(11)】
【薬事日報 2009年8月24日号】
ことばのオアシス(11)
幸福な家族はどれも似通っているが、不幸な家族は不幸のあり方がそれぞれ異なっている。
――レフ・トルストイ
作家は書き出しに全神経を集中する。『アンナ・カレーニナ』のこの有名な書き出しは、レフ・トルストイが17回も推敲に推敲を重ねたと伝えられている。この長編小説はこれまで多くの訳者によって翻訳されているが、トルストイ苦心の書き出しに限って言えば、どの訳者の訳ももう一つしっくりこない。そこで、己の非力を省みず訳(英語からの重訳)に挑戦してみたのが、上掲のものである。
美貌の人妻アンナの不倫・転落物語と、身近なカップルの着実で幸福な人生を対比させているところに、この作品の尽きせぬ魅力があるのだと思う。
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