榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

私はスズメが好きだ・・・【山椒読書論(410)】

【amazon 『スズメの謎』 カスタマーレビュー 2014年2月11日】 山椒読書論(410)

私はスズメが好きだ。農家の敵として評判が悪く、バード・ウォッチャーからも一般の人からも「ありふれた鳥」と軽んじられているが、私は好きだ。じっと見詰めていると、仕種のかわいらしさに気がつくはずだ。そして、子スズメの動作は愛くるしい。鳴き声だって、よく聞いてみると、意外に美声だ。

スズメの謎――身近な野鳥が減っている!?』(三上修著、誠文堂新光社)は、スズメに焦点を当てた珍しい本である。

スズメは日本に何羽いるのか? 著者は、いろいろと工夫を重ねて、1800万羽と推定している。

最近よく言われるように、スズメは本当に減少しているのか? 著者は、科学的な検討を踏まえて、「このようにして、スズメの減少は確からしいことがわかってきました。個々の記録を見るとさまざまな問題点もあると思います。しかし、4つすべての結果が、スズメの減少を表しているのであれば、現段階では、スズメは減少していると考えるべき」という結論に達している。どれくらい減っているのかについては、「私は、いろんな記録を総合して考えてみて、1990年から2010年の20年間に、少なくとも5割は減少したと考えています。つまり約20年間で半分になったということです」と述べている。

なぜスズメは減少しているのか? 「なぜ減っているかという原因を解明するのは、かなりやっかいな作業なのです。なぜ難しいかを説明するために、まずは、科学において、原因を探し出す方法を説明しましょう。そして、スズメの減少の原因を見つけるのがなぜ難しいのか、そのような中で、どのようにして原因を見つけたのかをお話していきます」。この原因に迫る科学の方法が、本書の真骨頂である。観測のAルートは、「物事をよく観察して仮説を立てる」→「その仮説が正しいと仮定したときに、どんなことが観測されるかを予測する」→「観測をする」→「予測どおり」→「仮説は正しいようだ」→「本当に正しいか、別の面から検討する」という流れ。観測のBルートは、途中から違う道を辿る。すなわち、「観測をする」→「予測と違う」→「仮説は間違っているようだ」→「新しい仮説を考える」という流れだ。もう一方の実験のCルートは、「物事をよく観察して仮説を立てる」→「その仮説が正しいと仮定したときに、どんな実験をしたら、どんな結果が得られるかを予測する」→「実験をする」→「予測どおり」→「仮説は正しいようだ」→「本当に正しいか、別の面から検討する」という流れ。実験のDルートは、途中から別の道へと分かれていく。すなわち、「実験をする」→「予測と違う」→「仮説は間違っているようだ」→「新しい仮説を考える」となる。

これらの検証から、著者はスズメの減少の要因を、①少子化、②巣を作れる場所の減少、③餌を取る環境の減少――に求めている。

「この本では、スズメの話を通して、科学的なものの見方を随所にちりばめたつもりです。世界をそんな風に見ることを試してみてください。そして、自分で解き明かしていってみてください。・・・そして、よければ研究者の道を志してください。研究者になるのは平坦な道ではありません。が、そこには大きな楽しさがあります」。著者は、高校生たちに、大学に進んで「鳥の研究者」を目指してほしいと呼びかけているのだ。