榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

紙による読書か、デジタルによる読書か、その優劣は・・・【山椒読書論(421)】

【amazon 「日経サイエンス2014年4月号」 カスタマーレビュー 2014年2月28日】 山椒読書論(421)

日経サイエンス2014年4月号」(日経サイエンス社)に掲載されている「デジタルより紙がわかりやすい理由」(F・ジャブル著、日経サイエンス編集部訳)は、紙による読書とデジタル機器による読書の優劣が比較されていて、なかなか興味深い。

結論は、「電子書籍リーダーやタブレット端末が普及してきたが、紙の書籍のほうが優れている点が依然として存在する」というものだが、実験結果から判断して、「脳は文章全体を一種の物理的風景として知覚しているらしい。読書の際、私たちはその文章について、地形や室内空間に対する心的な地図と同様の心的表象を構築している」というのだ。

英国のセレンという研究者は、「1冊の本のなかで自分がどこを読んでいるのかを暗に感じられることが、思いのほか重要であるとわかった。電子書籍を手にして初めて、人はこの感覚を失ったことに気づく。人が1冊の本のなかで自分がどこにいるかをどのようにして把握しているかについて、電子書籍のメーカーは考えが足りないと思う」と語っている。

「画面で読むよりも紙で読んだほうが内容をよく理解・記憶できることが、多くの実験で示されている。この差は紙がもたらす身体性によると考えられている」として、「紙がデジタルに勝るポイント」を4つ挙げている。①文章の一節を思い出すとき、それがページのどこにあったかを思い描くことが多い。開いた本にはたくさんの角があり、それらが一種の目印となって、そうした位置の記憶を強めている、②紙の書籍の場合、異なるページへ素早く飛んで文を参照したり、先の部分に書かれていることにざっと目を通したりできる。③既読ページと未読ページの厚さを手で感じることができる。画面表示のプログレスバーよりもはっきりした感覚が得られ、文章について明瞭な心的地図を形成しやすい、④紙に印刷されたインクは周辺光を反射している。これに対しパソコンやタブレット端末の画面は発光しているので、目を疲労させるほか、集中力を消耗させる可能性がある――というのだ。紙の最大の強みは、その「単純さ」にあるのだろう。

根っからの紙読書派である私には、いずれも頷ける内容で、この論文に至極満足している。