榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

旅先で読みたくなる本・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2)】

【恋する♥読書部 2014年1月14日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2)

連休を利用して、軽井沢の北方の温泉を訪れました。「山近く 岩風呂露天 雪見酒」と、私好みの温泉でした。そこで、一句――雪見風呂 ぼんやり浮かぶ 白頭巾 <臥龍>。

私は、旅先ではその土地に関する本を読み返したくなるのです。今回は、『嬬恋(つまごい)・日本のポンペイ』と『軽井澤三宿と食売女(めしもりおんな)』を持参しました。

嬬恋・日本のポンペイ』(浅間山麓埋没村落総合調査会・東京新聞編集局特別報道部編、東京新聞出版局。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)には、天明3(1783)年8月5日の浅間山の大噴火の熱泥流により、全家屋118戸が埋没・流失してしまった、火口から12km離れた鎌原(かんばら)村の凄絶な被害状況と力強い復興の物語が記されています。

村の全人口570人の実に84%に当たる477人が死亡してしまいますが、驚いたことに、辛うじて死を免れた93人(男40人、女53人)が、悲劇に見舞われたその翌月からもう再生に向けて立ち上がったのです。それも、妻を失った夫が、夫を失った妻と、子を失った親が、親を失った子と新しい「家」(家族)を作っての復興です。

この本を読むと、東日本大震災の被害者の皆さんの塗炭の苦しみ、苦労を思わずにはいられませんでした。

軽井澤三宿と食売女』(岩井傳重著、櫟<いちい>。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)には、江戸時代の中山道の繁栄した追分、沓掛(中軽井沢)、軽井沢の宿場の食売女の悲惨な実態が描かれています。