榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ヒトラー暗殺計画を果敢に実行した男・・・【山椒読書論(390)】

【amazon 『ヒトラー暗殺計画』 カスタマーレビュー 2012年1月7日】 山椒読書論(390)

アカデミー賞の7部門を制したスティーヴン・スピルバーグ監督の『シンドラーのリスト』は映画史上に名を残す感動的な作品であるが、その原作である『シンドラーズ・リスト――1200人のユダヤ人を救ったドイツ人』(トマス・キニーリー著、幾野宏訳、新潮文庫。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)は、その中に盛り込まれている情報の質と量において映画を凌駕している。

本書の中に、ナチスの崩壊を熱望していたオスカー・シンドラーが、ラジオ放送で、アドルフ・ヒトラー暗殺計画が実行に移されたが、失敗に終わったことを知って、落胆する場面がある。ナチス打倒を計画していたクラウス・シュタウフェンベルク陸軍大佐による、この事件の全容は『ヒトラー暗殺計画』(小林正文著、中公新書。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)に詳しい。

1944年7月20日、予てからナチス打倒を計画していたグループに属するシュタウフェンベルクが総統大本営の会議室に爆弾を運び込む。爆弾は予定どおり爆発したが、いつくかの偶然が重なって、ヒトラーは奇蹟的に死を免れる。シュタウフェンベルクはヒトラーの命によって事件直後に処刑されてしまう。

シンドラーとは異なるやり方ではあるが、ここにも、狂気の独裁者に果敢に闘いを挑んだ勇気ある男がいたことを、私たちは知るのである。