榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ウメがサクラより春早く開花するのはなぜか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1245)】

【amazon 『植物のひみつ』 カスタマーレビュー 2018年9月22日】 情熱的読書人間のないしょ話(1245)

雨の上州路で、いろいろな植物に出会いました。サラシナショウマが薄桃色の花を長い穂状に付けています。薄紫色のアゲラタム(カッコウアザミ)が、赤いサルビアと鮮やかなコントラストをなしています。雨中の白いシラハギと黄色いオミナエシが秋を感じさせます。いろいろな色合いのキキョウが咲いています。桃色のアメリカフヨウの花弁に水滴がたくさん付いています。リンゴの実が色づいています。

閑話休題、『植物のひみつ――身近なみどりの「すごい」能力』(田中修著、中公新書)では、身近な10の植物たち――ウメ、アブラナ、タンポポ、イネ、アジサイ、ヒマワリ、ジャガイモ、キク、イチョウ、バナナ――の驚くべき秘密が明かされています。

なぜ、ウメはサクラより春早く開花するのでしょうか。「全国的に、ウメの花はサクラの花より1~2ヵ月間ほど早くに咲きます。・・・この理由は、『眠り』の深さの違いです。ウメもサクラも、秋に夜が長くなってくると、葉っぱでつくられるアブシシン酸の働きで、ツボミは眠ります。でも、ウメのツボミの眠りは浅く、サクラのツボミの眠りは深いのです。そのため、眠りから目覚めるためには、ウメのツボミは少しの寒さにさらされればよく、サクラのツボミはウメよりも厳しい寒さに長い期間さらされる必要があります。1月ごろには、眠りの浅いウメのツボミは、眠りから目覚めているので、少し暖かければ、花を咲かせます。一方で、サクラのツボミは、眠りからまだ目覚めていないので、花を咲かせません。・・・ツボミが目覚めたあとは、ツボミが開きはじめるための温度が大切です。ウメの場合には、サクラより、この温度が低いのです」。

ウメやサクラが開花するためには、冬の寒さの中で、低温を受けることで開花を阻害する物質が分解され、眠りから目覚めることが先ず必要で、その後に、暖かくなると、開花を促す物質が作られて、開花が起こるのです。

近年、在来種のカントウタンポポやカンサイタンポポがなかなか見られなくなり、外来種のセイヨウタンポポが増えているのは、なぜでしょうか。「セイヨウタンポポは、メシベに花粉がつかなくても、タネをつくるという『ふしぎ』な能力をもっているのです。このようにしてできたタネは、発芽する能力をもっています。虫に花粉を運んでもらわなくても、また、自分の花粉をつけることがなくても、タネができるのです。このように、メシベだけでタネがつくられる生殖方法は、『単為生殖』といわれます。こうして、セイヨウタンポポは、一年中、ものすごい繁殖力で増え続けます。それに対し、日本に古くから生きてきたカンサイタンポポやカントウタンポポなどの在来種には、単為生殖の能力はありません。しかも、在来種には、自分の花粉を自分のメシベにつけても、タネができないという『自家不和合性』という性質があります。そのため、在来種のタネができるには、まわりに仲間がいて、ハチやチョウが他の株から花粉を運んでくれなければなりません。・・・(在来種は)球状の綿毛の中にできる(タネの)個数は、セイヨウタンポポの約200個に対し、ずっと少なく、半数くらいです。しかも、在来種のタネは、秋まで発芽せず、花が咲くのも春に限られています」。このように、セイヨウタンポポと在来種との間には、生殖方法、作るタネの個数、そのタネの発芽能力などに大きな違いがあります。セイヨウタンポポが在来種を駆逐したのではなく、上記の理由で、現在の生育状況が生じているのです。

アジサイの色の秘密が、実に分かり易く説明されています。「アジサイの花の色を出すのは、『アントシアニン』という物質です。・・・アントシアニンは、赤色になったり青色になったりする色素なのです。『何が原因で、アントシアニンは、赤色になったり青色になったりするのか』との『ふしぎ』が抱かれます。この『ふしぎ』には、アントシアニンの色が、花に含まれる物質によって変わるというアントシアニンの『ひみつ』の性質が隠されています。土壌には、アルミニウムという物質が含まれています。これを多く吸収したアジサイでは、アントシアニンが青色になります。それに対し、アルミニウムの量が少ないと、アントシアニンは赤色になるのです。『なぜ、花に含まれるアルミニウムの量が変わるのか』との疑問がおこります。その理由は、アルミニウムが、酸性の土壌には溶けますが、アルカリ性の土壌には溶けないことが原因です」。日本の多くの地域の土壌は酸性であること、その理由は降雨量が多いこと、雨には二酸化炭素が溶け込んでいるため、雨は弱い酸性であることが説明されています。

ヒマワリの花が太陽の姿を追って回るというのは、本当でしょうか。これは俗説で、「ヒマワリの花は、東を向いて咲く」が正しいのです。大きくて重いヒマワリの花が、毎日、太陽を追ってクルクルと回ることは不可能です。東を向いて咲く理由として、●明るいほうを向いて咲くと、太陽の光が花の中に多く射し込むことで、健康的にタネ作りができること、●光が射し込み、花の中央部分の温度が高くなると、虫がその温かさを求めて花の中に寄ってきてくれるため、花粉を運んでもらえる機会が増えること、●花の中の温度が高いと、花の香りがよく発散し、虫が寄ってき易くなること――の3つが挙げられています。

本書のおかげで、植物の凄さを再認識することができました。