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外資系企業のトップ・マネジメントに学ぶ時間管理術・・・【あなたの人生が最高に輝く時(50)】

【ミクスOnline 2015年3月13日号】 あなたの人生が最高に輝く時(50)

外国人トップ・マネジメント

学ぶ気持ちさえあれば、誰からでも学ぶことができる。『なぜ、自分の予定を優先する人は仕事ができないのか』(能町光香著、あさ出版)は、長く秘書を務めた著者が外資系企業の外国人トップ・マネジメントたちから学んだ時間管理術が凝縮している。

彼らは「本社(外国)からの期待を背負い、2、3年という短い期間で大きなミッションを遂行し、成果を出さなければならない人たちばかりです。異国『日本』で、言葉もわからず、異文化の環境で、多くの人をマネジメントするのは、並大抵のことではありません。ところが彼らは、その限られた時間内で驚くような成果を挙げ続けたのです。彼らの成果を支えたのが、タイムマネジメントでした。それは、世間でよく言われる自分の時間効率だけを求めるのではなく、『相手』の時間に配慮し、『相手』の都合、予定を優先させるという、まったく違うもの」。「自分」の時間効率を上げることを説く時間管理術の本は多いが、本書のように「相手」の時間効率を優先させようと提唱する書は珍しい。

「エグゼクティブと呼ばれる一流の人たちにとって、『時間』は財産です。1分1秒ムダにしたくありません。だからこそ、彼らの仕事の仕方は、じつにリズミカルです。優先順位の高いものから卓越した集中力で取り組み、終わったら少し息抜きをする。ひたすら、この繰り返しです」。そのポイントは、①その時その時、優先順位の高い仕事をきちんと見極めること、②卓越した集中力を保ちながら仕事をすること――の2つだというのだ。

「秘書は、リーダーの最も近い場所で仕事をしています。そのため、エグゼクティブたちの特有な時間の使い方をマスターする必要があります」。私たちは一流秘書を目指すわけではないが、この時間管理術は私たちの仕事にも大いに役立つはずだ。仕事にとどまらず、人生にも資することだろう。

量と質

「1日24時間。これは誰にも変えることができない『量』です。それに対し、『質』は、ちょっと強引ですが、『(一定の時間の中で)どれだけのことができたか、どれだけ満足な過ごし方ができたか』、すなわち充実度、濃密さと定義づけることができるでしょう。仕事がデキる人、ビジネスに限らず人生を謳歌している人は、『質』を意識して時間を使っています。『質』を意識できていないと、ただ時間に流されるだけの人生を送ることになってしまうと知っているからです。日々を快適に過ごし、豊かな人生を送りたいのであれば、自らの時間の使い方に積極的に向き合い、こだわり、『質』を高くしていくことが必要です」。全ての人間にとって「時間は平等」といわれるが、それは嘘だ、「時間の質にこだわるからこそ、人生の質を高めることができる」というのだ。

それでは、時間に追われる人と、時間を使いこなす人の違いは何なのか。「時間を味方につけ仕事をしている人は、それぞれの時間帯に何をしたいのかを考え、何をするかを決めています。ちょっとした時間も丁寧にあつかっているのです」。●朝、出社した時に先ずすること、●最も集中できる時間にすること、●集中できなくなった時にすること、●急に時間が空いたらすること――を、常にチェックするようアドヴァイスしている。

相手の時間

「段取り上手な人ほど、相手の時間を尊重している」、その結果、「相手を尊重することで自分の環境を整える」ことが可能になるのだ。「相手に気持ちよく決断してもらう。相手が快適に仕事できる環境づくりを心がける」ことこそ、時間管理術の奥義なのである。

相手軸に沿って仕事を組み立てる際のポイントが3つ挙げられている。「①相手の時間に敏感になる、②相手と同じ時間感覚で動く、③相手の1分の価値を知る」。仕事のできるトップ・マネジメントにとって、「極限まで集中した1分は、通常の10倍の価値がある」という言葉は、説得力がある。

「相手の時間を尊重し、時間の大事さを知っているからこそ、相手に価値ある時間を提供するために、そして、気持ちよく全力で取り組んでもらいやすい環境を提供するために、準備に力を注ぐのです」。

自分の時間

自分の時間感覚を高めるためには、「ムダ時間」を見つけ、積極的に省いていく作業が欠かせない。「仕事は成果を生むためにすることですから、これら(のTime Wasters<時間潰し業務>)が多ければ多いほど、仕事ができていない=ムダ時間が多いということになります。『時間を有効に使いたい』のであれば、一日でも早くこのムダ時間を洗い出す必要があります」。

「時間管理の達人たちは、ゴールデンタイム(一日の中で最も集中できる時間帯)に、最大限の集中力により、物事を成し遂げようとします。なぜなら、彼らはこのゴールデンタイムこそが、もっとも生産性の高い時間だと知っているからです」。ここで、「フォーカス(集中力)・エネルギー(活力)・マトリックス」が威力を発揮する。正方形を4等分した象限を反時計回りに、①逃避型:集中力はあるが、活力に欠ける人、②先送り型:集中力も活力もない人、③散漫型:活力はあるが、集中力に欠ける人、④目的志向型:集中力も活力もある人――とする。自分はこのカテゴリーのどれに該当するかを自己分析し、④の目的志向型を目指せというのだ。「目的志向型の人は、休む時は『休む』ことを目的にし、『意識して何もやらない』という選択をします。つまり、『休む時』は、あれこれと仕事のことを考えることなく、完全にオフの状態をつくるのです。エグゼクティブはみな、10%しかいないと言われる、④の目的志向型です。オンとオフをうまく切り替えることで仕事もプライベートも満喫しています。バランスがとれているといえます」。

「タイムマネジメントが上手な人たちは、断り上手です。なぜなら、『時間』は有限であると知っているからです」。

周りの応援

「『時間管理』と言うと、『自分の時間を効率よく使う』ことを真っ先に思い浮かべるでしょう。たしかに時間を効率よく使うために、一生懸命努力すればそれなりの成果が挙げられます。ただ、それには限界があります。時間を有効に使うには、周囲の人たちからの応援が必要です。周囲の人たちが、あなたに時間を使ってくれればくれるほど、より効率よく時間を使うことができるようになります。『時間を使ってもらえる人』になると、仕事が滞りなく、いままで以上にスムーズに進んでいきます。そのスピードは、目を見張るものがあります。周囲の人たちとのコミュニケーションもよくなっていきます。こうして環境が整うことで、さらに時間を有効活用できるようになります」。

時間管理術の要諦を一言で表現すると、どうなるか。「自分の時間とは『自分が優先したいことに集中する時間』」という言葉が、本書の性格を雄弁に物語っている。