ギャツビーに劣らずドラマティックなフィツジェラルドの生涯・・・【山椒読書論(386)】
【amazon 『フィッツジェラルドの文学』 カスマターベビュー 2014年1月14日】
山椒読書論(386)
『グレート・ギャツビー』(あるいは『華麗なるギャツビー』)(F・スコット・フッツジェラルド著、野崎孝訳、新潮文庫)のようなロマン溢れる作品を生み出した作者、F・スコット・フィツジェラルドの44年の生涯は、ギャツビーのそれに劣らずドラマティックである。
当時の若者を瑞々しく描いて、ジャズ・エイジの代弁者として華々しく文壇に登場し、一躍、人気流行作家となるが、大恐慌を機に大きく変わるアメリカの歴史の転換期に、このロマンティックな作家は対応できない。その後は世間から忘れられ、心ならずもハリウッドのお抱え作家として再起を期すがうまくいかず、酒浸りの生活を送る。
発狂してしまう奔放な美貌の妻・ゼルダや、失意時代のフィツジェラルドを献身的に支えたシーラなど、フィツジェラルドが愛した女性たち、フィツジェラルドとヘミングウェイの友情と確執など、この1920年代の栄光と破滅を自ら具現して彗星のごとく消えていった作家について、もっと知りたいという向きには、『フィッツジェラルドの文学――「アメリカの夢」とその死』(刈田元司編、荒地出版社。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)を薦めたい。