『ガリヴァー旅行記』の著者・スウィフトは徹底した厭世主義者だった・・・【山椒読書論(388)】
【amazon 『スウィフト考』 カスタマーレビュー 2014年1月15日】
山椒読書論(288)
『ガリヴァー旅行記』の著者、ジョナサン・スウィフトは、悩みと不平、不満の塊とでもいうべき、徹底した厭世主義者であった。自分がこの世に生まれたことを嘆き悲しむあまり、自分の誕生日には喪服を着けて断食したという。
『スウィフト考』(中野好夫著、岩波新書。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)は、読み応えがある評伝である。スウィフトというのは、複雑で、矛盾だらけで、多面的で、とても一筋縄ではいかない人物であるが、中野好夫の筆は、稀代の人間嫌いで皮肉屋であったスウィフトの特異な人間像を巧みに浮かび上がらせている。
私たちの周囲でもたまにスウィフト的な人を見かけるが、本物のスウィフトに比べると、いい人に見えてしまうから不思議だ。なぜかいつも不機嫌な人、しかめっ面をしている人には、恰好の教科書と言えよう。