肉体の一部を切り取る目的で飼育されているスペアたち・・・【山椒読書論(451)】
【amazon 『スペアーズ』 カスタマーレビュー 2014年6月4日】
山椒読書論(451)
『スペアーズ』(マイケル・マーシャル・スミス著、嶋田洋一訳、ソニー・マガジンズ。出版元品切れ)は、戦慄のSFである。
「子供ができると、胎児から数個の細胞が採取される。この細胞は培養され、試験管の中から保育器に移され、できる限り通常に近い状態で育成される。そしてこの人工の双生児が自力で呼吸できるようになると」、このスペアたちは農場に移され、飼育される。
「やがて現実の生活を送っている双生児の兄弟姉妹が怪我をするか病気になるかすると、医者たちは目的のスペアを捜し出し、必要な部分を切り取って」、また農場に戻す。スペアたちは、農場で「肉体の一部が切り取られるのを待っている。スペアたちには服もなく、財産もなく、家族もない」。
この本の出版時はSFの世界の出来事に過ぎなかったが、医学の急速な進歩が、近未来では現実のものにしてしまうかもしれないと考えると、複雑な気持ちになる。