考古学の歴史がすんなりと頭に入ってくる、考古学者のエピソード集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1464)】
さまざまな色合いのアマリリスが咲き競っています。ウケザキクンシラン(クリビア・ミニアタ)が朱色の花を咲かせています。エンドウが薄紫色と深紅のコントラストが鮮やかな花を付けています。ネギが元気に育っています。因みに、本日の歩数は10,854でした。
閑話休題、『若い読者のための考古学史』(ブライアン・フェイガン著、広瀬恭子訳、すばる舎)は、3つの魅力を備えています。
魅力の第1は、世界の考古学の歴史が、さまざまな考古学者のエピソードを辿ることで、すんなりと頭に入ってくること。
魅力の第2は、40の章のいずれもが短くまとめられており、内容が簡にして要を得ていること。
例えば、「古代エジプトを読み解く」の章では、古代エジプトのヒエログリフを解読したジャン・フランソワ・シャンポリオンと並んで、エジプト学の基礎を固めたジョン・ガードナー・ウィルキンソンが登場します。「ウィルキンソンが古代エジプト人の姿を心に残るやり方で描写してみせたことで、世界最古の文明に関する本格的な研究に光があたった。ナイル川流域での十把ひとからげの破壊は、より規律ただしい研究に少しずつとってかわられていった」。
「牛だよ(トロース)! 牛(トロス)!」の章では、スペインのアルタミラ洞窟の壁画発見の瞬間が活写されています。「帰国した(サウトゥオラ)侯爵は発掘を決断した。9歳になる娘のマリアがいっしょに行きたいとねだった。父と娘が見守る前で、作業員たちがつるはしやシャベルを使って洞窟内の地面を掘りかえし、彫り細工の遺物をざっと探してまわった。そのどろんこ遊びを見物していたマリアはすぐに退屈し、洞窟の奥のほうへ遊びに行ってしまった。突然、天井の低い支洞のほうから叫び声が響いた。『トロース! トロス!(牛だよ! 牛!)』」。クロマニョン人が描いたバイソンなどの動物たちが、少女の叫び声によって15,000年ぶりに甦ったのです。
「すばらしいもの」の章では、ツタンカーメン王墓を発見したハワード・カーターの活躍が語られているが、彼のライヴァル考古学者、セオドア・デイヴィスについて、このような一節が記されています。「デイヴィスは自制心と潤沢な資金をたよりに、思うような成果のないまま何シーズンも発掘を続けた。1912年までねばったあと、王家の谷は掘りつくしたと宣言して手をひいた。盗掘をまぬかれたツタンカーメンの王墓入口までわずか2メートルというところだった」。この2メートルがライヴァルたちの明暗を分けたのです。
「年代を測定する」の章では、1949年にウィラード・リビーが考案した放射性炭素年代測定法によって5万年も前の遺跡や遺物の年代決定が可能になったこと、さらに、カリウム・アルゴン年代測定法によって300万年以上前にまで遡れるようになったことが綴られています。そして、「見えないものに光を」の章では、地中レーダーやLIDAR(光検出測距)といったリモートセンシングによって、鬱蒼たる広大な森に覆われたアンコール・ワットの全体像が明らかになった事例が紹介されています。
魅力の第3は、各章に想像力を掻き立てる挿し絵が添えられていること。
若者だけでなく、年寄りも楽しめる一冊です。