榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

動物に対して、こんなに思い違いをしていたとは!・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2031)】

【amazon 『カラスはずる賢い、ハトは頭が悪い、サメは狂暴、イルカは温厚って本当か?』 カスタマーレビュー 2020年11月5日】 情熱的読書人間のないしょ話(2031)

今季初めて、ヨシガモ(写真1~7)の雄、雌に出会いました。ザクロ(写真8、9)の実が陽に輝いています。ナツメ(写真10)、マユミ(写真11)が実を付けています。ホトトギス(写真12、13)が咲いています。

閑話休題、『カラスはずる賢い、ハトは頭が悪い、サメは狂暴、イルカは温厚って本当か?』(松原始著、山と溪谷社)は、動物に対する私たちの多くの思い込みをピシャリと正してくれます。

例えば――。
「台所には必ずと言っていいほど、ゴミの上を歩き回り、しかもその後で食品の上もウロつくやつがいる。Gのつくアレ・・・ゴキブリだ。ところが、ゴキブリが媒介する病気というのは、考えてみたら思い当たらないのである。もちろん、なんらかの理由でゴキブリに付着した病原体が運ばれることはあるのだが、ゴキブリを宿主として移動するタイプの病気はない。しかも、最近の研究によるとゴキブリは非常に強力な抗体を持ち、いわば抗菌仕様のボディである。まあ、居場所が排水溝だったりトイレだったりゴミ箱の中だったり、決して清潔な場所ではないし、体表面に付着する病原体まで皆殺しにするようなものではないが、漠然と思われていたよりはずっと少ないのだ」。

「チョウの餌は花蜜だが、ミネラルも必要だし、種類によってはアミノ酸の豊富な餌も利用する。動物の尿や糞、そして死骸だ、花蜜を吸うのと同じく、吻を伸ばして、表面から栄養を摂取している。このような糞食性、屍食性のチョウは何種もいて、彼らはタンパク質が分解して発する臭いにも寄ってくる。その成分の中には乳酸などの老廃物も含まれるので、真夏の、汗だくになった人間の体はチョウにとって『おいしそう』なのである。ということで、肩先に止まったツマグロヒョウモンなんぞは『んー、なめてみたら味はイマイチだな』などと思いながら、Tシャツをチューチューしているのであろう(ただし、蜜食性のチョウはシャンプーや芳香剤のフローラル系の香りにも寄ってくるので、チョウにたかられても汗臭いとは限らない。念のため)」。

「群れを作る理由は、究極的にいえば極めて単純だ。そのほうが生き残れるからである。・・・鳥類などの場合、見張り能力の向上も大きい。・・・(集団だったら)みんなで食べたり顔を上げたりをランダムに繰り返していても、『誰か一人は顔を上げて周りを見ている時間』は、自分一人の場合よりも確実に長くなる。つまり、目が多いほうが、見逃しは減る。また、ダチョウの観察から、集団が大きくなるほど、1羽あたりの頭を下げている時間が長くなる。つまり安心して長時間餌を採るようになることが知られている。それでも見る目が増えた分、警戒能力は上がっているから、『誰も周りを見ていない無防備な瞬間』は、群れが大きくなるにつれて減る。つまり、群れが大きいほうが、より安全に、より長時間採餌ができるのだ。誰かが敵を発見すれば、そいつは鳴き声を上げるか逃げるかするから、自分も一緒に逃げればいい。・・・捕食者対策としては、『薄めの効果』も考えなくてはならない。あなたが一人でいる時に、ゾンビだかジェイソンだかが襲ってきたら、やられるのは確実にあなただ。だが、その時に10人、あるいは100人いたら? その場合、あなたが狙われる確率は1/10、1/100である。仮に100万人いたら、ほぼ安心していいレベルまでリスクは小さくなる。これが『薄めの効果』、身も蓋もない説明をすれば『集団に紛れ込んでいれば、他の奴を身代わりにして自分は助かるだろう』という理屈である。捕食回避以外に、『情報センター仮説』というのもある。これは、誰かが餌の在りかを知っている場合、他の個体が積極的に教えなくても、知っていそうな奴に付いていけばいい、というアイディアだ。これについては、クロコンドルを使った面白い実験がある」。

「巣作りあたりまで見届けたオシドリのオスは、プイと姿を消してしまう。以後、子育てするのはメスだけである。オスはその間、オスだけで小さな群れを作って過ごしている。これが『おしどり夫婦っていうけど、本当は全然違うんですよ!』という鳥類学にまつわる有名な小噺であった。私も本に書いた。ところが、オシドリに標識し、何年も継続して多くの観察記録をとったという研究が、最近発表された。それによると、夏の間メスのもとを去ったオスは、秋になると再び同じメスのところに戻り、求愛し、エスコートしている例が少なからずあったのである! オシドリのオスたちは行きずりの薄情者揃いではなかった。子育てこそしないが、同じメスと何年も連れ添う、本当の『おしどり夫婦』の場合もあったのだ。もちろん別のメスとペアになってしまうこともあるのだが、それがデフォルトというわけでもないようだ」。オシドリは「おしどり夫婦」ではないと信じ込んできた私は、この件(くだり)には、腰が抜けるほど驚きました。