榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

民主主義の4つの危機とは・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2056)】

【読書クラブ 本好きですか? 2020年11月30日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2056)

イソヒヨドリの雌(あるいは雄の若鳥。写真1)に出くわしました。アオサギ(写真2)が羽を広げて日光浴をしています。寒くなり、めっきり数が少なくなったコバネイナゴ(写真3)、アキアカネの雄(写真4)をカメラに収めました。マンリョウ(写真5、6)、センリョウ(写真7、8)、キノミセンリョウ(写真9)が実を付けています。今夜の満月は半影月食ということだが、私の目では確認できませんでした。因みに、本日の歩数は11,817でした。

閑話休題、『民主主義とは何か』(宇野重規著、講談社現代新書)は、民主主義とは何かというテーマに対し、歴史的なアプローチから迫っています。

その中で、私にとって一番興味深いのは、私の大好きなジャン・ジャック・ルソーを論じた箇所です。

「しばしば『フランス革命を起こしたのはルソーだ』といわれます。彼の『人間不平等起源論』(1755年)や『社会契約論』(1762年)、あるいは『エミール』(1762年)の影響が、革命の大きな原動力になったという理解です。しかしながら、今日では、革命勃発にあたってのルソーの影響は、それほど大きくなかったとされます。・・・ルソーは革命より10年以上前に亡くなっていますが、彼の政治的言説に注目が集まったのはむしろ、革命が急進化する過程においてでした。・・・ロベスピエールらが愛読していたのがルソーの著作です。結果的に、山岳派の政治家たちは自らをルソーの後継者であると主張し、このことがフランス革命といえばルソーの思想的影響による、という理解を生み出しました。ルソーの思想が非常にラディカルな主張を含んでいたのはたしかですが、これが直ちにフランス革命を引き起こしたかは疑問です。革命で主導権を握った急進派が、新たな共和国の体制原理を求めるなかでルソーに頼ったというのが実際に近いでしょう。その意味では、ルソーは政治的に利用されたといえるかもしれません」。

著者は、民主主義の危機を4つ挙げています。①ポピュリズムの台頭、②独裁的指導者の増加、③第4次産業革命とも呼ばれる技術革新、④コロナ危機――の4つです。

そして、4つの危機を乗り越えるために必要なものについて、こう述べています。「最終的に問われるのは、私たちの信念ではないでしょうか。厳しい時代においてこそ、人は何を信じるかを問われるのです」。具体的には、①公開による透明性、②参加を通じての当事者意識、③判断に伴う責任――の3つが強調されています。現在の日本の民主主義を考える上で、参考になる一冊です。