宝石箱のような、信じ難いほど美しいチョウたちの大型写真集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2120)】
幼い頃、祖母から、節分には厄除けのため、福豆を撒き、年齢の数だけ食べるんだよと教えられて以来、その教えを守ってきたが、年を重ね、食べる豆の数がかなり増えてきたので、前日から食べています(笑)。
閑話休題、『世界で最も美しい蝶は何か(増補新版)』(海野和男写真・文、草思社)は、現実に出会ったら心臓が破裂してしまいそうな、信じ難いほど美しいチョウたちのオン・パレイドです。
●ミイロタテハ――。
「ミイロタテハの仲間は、緑の魔境と呼ばれるアマゾンの森の奥深くに生息し、分布や生態など今なお神秘のベールに包まれている。その学名をとってアグリアスと呼ばれることが多く、世界で最も美しい蝶とされている」。
ミイロタテハ属のクラウディーナミイロタテハの目を惹きつける赤と紺のコントラストは、息を呑む美しさです。
●モルフォチョウ――。
「モルフォチョウの仲間は、世界で最も輝きの強い蝶だ。中南米の森林地帯に分布し、濃い緑のジャングルをバックに青い光を点滅させるように飛ぶ姿は、得も言われぬ美しさである」。
メネラウスモルフォの全面真っ青な翅を見ていると、吸い込まれそうな錯覚に陥ります。
●トリバネアゲハ――。
「トリバネアゲハは、その名の通り、鳥のように大きな翅を持つ蝶の一群だ。世界で最も豪華な蝶はと問われれば、多くの人がこのトリバネアゲハ属の蝶を挙げるだろう。トリバネアゲハの分布は、生物地理学上のオーストラリア区に限られる。その多くはニューギニア島など、かつては訪れることが難しかった辺境の地に棲んでいる。それ故、19世紀にはヨーロッパのコレクターたちが、血眼になってこの蝶を求めたのである」。
緑と黒のコントラストが印象的なメガネトリバネアゲハ、黒地に緑の紋が特徴的なアカエリトリバネアゲハ、黒と黄の対比がくっきりしているヘレナキシタアゲハ――の美しさは格別です。
チャールズ・ダーウィンと並び、進化論の提唱者として知られるアルフレッド・ラッセル・ウォーレスが一際強く惹かれたのがトリバネアゲハでした。初めてメガネトリバネアゲハを捕らえた時のことを、「興奮のあまり頭に血が逆流し、あやうく卒倒しかけた」と記しています。
溜め息が出る、宝石箱のような大型写真集です。