榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

チャプリンは、映画『ライムライト』の原点ともいうべき小説を書いていた・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1056)】

【amazon 『小説ライムライト』 カスタマーレビュー 2018年3月14日】 情熱的読書人間のないしょ話(1056)

散策中に、ツクシを見つけました。サンシュユが黄色い花を咲かせています。マンサクが黄色い花をたくさん付けています。トサミズキの黄色い花が房になって垂れ下がっています。因みに、本日の歩数は10,862でした。

閑話休題、人生で必要なものは、勇気と想像力と、ほんの少しのお金――1914年のロンドン、自殺を図った若きバレエダンサー、テレーズを励ます老道化師・カルヴェロの台詞です。

「人生を恐れてはいけない。生きていくことは美しく素晴らしい」というカルヴェロの必死の説得に応え立ち直ったテレーズは、やがてプリマドンナの栄光を手にします。一方、かつては喜劇役者として人気を博したカルヴェロですが、老いて落ちぶれた彼に名声は戻ってきません。

チャールズ・チャプリン監督・主演の映画『ライムライト』(DVD『ライムライト』<チャールズ・チャプリン監督、チャールズ・チャプリン、クレア・ブルーム出演、パイオニアLDC。販売元品切れだが、amazonなどで入手可能)は、人生について、愛について、献身について、名声について考えさせられる、古くとも輝きを失わない名画です。私の最も好きな映画の一つです。

チャプリンが、『ライムライト』に先立って、その原点ともいうべき小説『フットライト』を書いていたと知り、慌てて、『小説ライムライト――チャップリンの映画世界』(チャールズ・チャップリン、デイヴィッド・ロビンソン著、大野裕之監修、上岡伸雄・南條竹則訳、集英社)を手にしました。

本書に収録されている小説『フットライト』と、これを補完する『カルヴェロの物語』には、映画『ライムライト』に登場する以前のテレーズの悲劇的な過去、そして、カルヴェロの苦悩に満ちた過去が詳しく綴られています。

「『ライムライト』は、世界の危機(=ファシズム)と渡り合ったチャップリンが、(アメリカの)反共主義の狂気の中、みずからの原点に戻った作品と位置づけられてきた」。

「しかし、(本書の)デイヴィッドの解説によって、『ライムライト』のアイディアの芽生えは、1916年末に(バレエダンサーの)ニジンスキーと出会った頃にさかのぼるもので、1930年代にはポーレット・ゴダードのためにみずからがダンサーとして出演する作品だったこと、戦後にバレエと道化というテーマを統合して本作が誕生したこと――つまり、終盤において人生を振り返った作品ではなく、デビュー3年目から育ててきた生涯のテーマを作品にしたものであることが明らかとなった」。

「本書は、『ライムライト』の世界を、ますます広く深く教えてくれる。それは、単にこの傑作の探究を助けてくれるだけにはとどまらない。芸の楽しさと哀しさ、人の愛の気高さと弱さ、なによりユーモアの大切さ――つまりは、人が生きることの素晴らしさを教えてくれるのだ」という監修者の言葉に、深く頷いてしまいました。

チャプリン・ファンには見逃せない一冊です。