社会の急ピッチなデジタル化に対する警告の書・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2411)】
ドウダンツツジ(写真1)が紅葉しています。小学生の男の子がするすると15mほどの大木を登っていきました(写真2)。驚いて、樹下の少年たちに尋ねたところ、彼は凄い木登り技術を持ってるんです、とのこと。因みに、本日の歩数は11,771でした。
閑話休題、『デジタル・ファシズム――日本の資産と主権が消える』(堤未果著、NHK出版新書)は、社会の急ピッチなデジタル化に対する警告の書です。
「『今だけ金だけ自分だけ』の強欲資本主義が、デジタル化によって、いよいよ最終ステージに入るのが見えるだろうか。デジタルは『ファシズム』と組み合わさった時、最もその獰猛さを発揮する。・・・そして今、急速にピッチを上げる『デジタル革命』が、世界に追いつけ後れをとるなと、牙を隠してやってくる。わかりやすい暴力を使われるより、便利な暮らしと引きかえにいつの間にか選択肢を狭められてゆく方が、ずっとずっと恐ろしい。無法地帯の仮想空間から全てを動かすアメリカの巨大IT企業や、それに対抗し新通貨でプラットフォーマーの座を狙う中国、世界統一政府を目指すエリート集団と、目先の利権に目が眩んだ政商たちによって、今まさに日本という国の『心臓部』が、奪われようとしているのだ」。
●最高権力と利権の館「デジタル庁」――
「デジタル先進国エストニアの国民が教えてくれたように、やたら横文字を並べる政治家の美辞麗句を鵜呑みにせず、システムそのものはうんと性悪説で設計することが肝心だ。それを使う私たちが、自国政府への信頼を育ててゆく、スタート地点に立つために」。
●本当は怖いスマホ決済――
「日本でもPayPay銀行が個人の信用スコアを企業に販売し始めており、2021年3月に成立したデジタル改革関連法では個人情報保護法が緩められ、これからは思想信条や犯罪歴、病歴などのセンシティブな個人情報も次々にデジタル化されてゆく。信用スコアに近い精度が、日本にも刻々と近づいてくる足音が、聞こえるだろうか? 社会保障を切り捨て、派遣システムなど雇用の流動性を重視する新自由主義政策を推進してきた竹中(平蔵)氏は、ベーシックインカムを入れる代わりに、生活保護や年金を廃止して、その分の予算を他のことに回すという。だが想像してみて欲しい。社会保障が一つまた一つと廃止され、毎月デジタルマネーで振り込まれる給付金が、セーフティネットだなどと呼ばれる社会のことを。信用スコアで引っかかり、給付が止められる可能性はゼロではない。現金でなくデジタルマネーが主流になる社会では、誰が蛇口を開け閉めするのかが死活問題になるのだ」。
●お金の主権を手放すな――
「日本政府が急ピッチで進めるキャッシュレス。デジタル人民元や各国のデジタル通過と同時並行で,IMFやBIS(国際決済銀行)、世界経済フォーラムが進める全世界共通の『統一デジタル通貨』。デジタルマネーの台頭で現金が減ってゆくことで失われる、私たちのプライバシー。想像してみてほしい。今日常の中で私たちが持つささやかな、お金についての『匿名性』や『主権』や『自由』を手放さないと決めることが、どれだけ大きく未来の社会に影響するのかを」。
●オンライン教育というドル箱――
「ビッグテック企業は、今、途方もない権力を持っている。私たちは自分で選んでいるつもりで、実は思想を形成されながら生きている。大人ならばそれに気づけるが、生まれた時からスマホがあり、便利な世界で生きるデジタル世代がその違いに気づくのは難しい。GAFAがトップに君臨するこの世界は、これからますます快適になり、よりスマート化していくだろう。その中で私たちが子供に教えられることがあるとしたら、いかにGAFAの中で快適に生きるかではなく、『GAFAの外にも世界がある』という真実だ。GAFAの外にも世界は存在する。GAFAの中で評価されない人が評価される世界がある。未来の選択肢は無限にあるということを、子供たちに教えなければならない。『デジタル・ファシズム』の中で、最もファシズム化していく分野は教育だからだ。それは長期にわたって人間の思想を形成し、最も洗練された形で、国家と、そこに住む人間の力を削いでゆく」。
戦慄の一冊です。