羅貫中の小説『三国志演義』→吉川英治の小説『三国志』の流れを汲む、横山光輝のコミックス『三国志』・・・【山椒読書論(573)】
【読書クラブ 本好きですか? 2021年8月8日号】
山椒読書論(573)
横山光輝のコミックス『三国志』(横山光輝著、潮出版社、希望コミックス・カジュアルワイド、全25巻)は、羅貫中の小説『三国志演義』→吉川英治の小説『三国志』の流れを汲んでいる。
「第1巻 桃園の誓い」は、今から1800年ほど昔の中国を舞台に、黄巾賊の乱から始まる。中国歴史上では、2世紀末、宗教結社を主体とした黄巾賊の乱が起こると、各地に軍事集団が割拠して、後漢は220年に滅ぶことになる。
若き行商人・劉備が、関羽、張飛と出会い、義兄弟の盃を酌み交わす。「『我ら天に誓う。我ら生まれた日は違えども、死す時は同じ日、同じ時を願わん』。それは義兄弟の誓いをする盃でもあり、主従の誓いをする盃でもあった。人はこれを桃園の誓いと呼んだ」。
劉備らは、黄巾賊と戦う義勇軍を組織する。「劉備、関羽、張飛の国を思う情熱は体中にみなぎっていた。この情熱が危険を承知で、前進に前進を続けさせるのだった。それは明日のための懸命の前進でもあった」。
その過程で、官軍の一司令官・曹操に出会う。「『あの人物(曹操)、若いのに学問も兵法もあり、きれる人物だ。将来あの人物はこの国に大きな影響を与えるような大人物になっていくんじゃないかと思ってな』」。この劉備の予感は、後年、的中する。
「(黄巾賊の総帥の弟)張宝の率いる数万の黄巾賊が劉備玄徳の率いるわずかの義勇軍によって完膚なきまでにたたき伏せられたのであった」。しかし、命を懸けて戦い大功を立てながら、劉備が任命されたのは、田舎の警察署長という軽いポストに過ぎなかった。