曹操のもとを辞し、劉備のもとに駆けつける関羽の、困難に満ちた千里に及ぶ踏破行・・・【山椒読書論(580)】
横山光輝のコミックス『三国志』(横山光輝著、潮出版社、希望コミックス・カジュアルワイド、全25巻)は、羅貫中の小説『三国志演義』→吉川英治の小説『三国志』の流れを汲んでいる。
「第8巻 関羽の千里行」――。曹操に徐州を追われ、その後、行方が分からなかった劉備が袁紹のもとで食客となっていることを知った関羽は、直ちに曹操のもとを辞し、劉備の妻子を伴って、河北を目指す。が、それは5つの関門を突破せねばならぬ困難に満ちた踏破行であった。「都を出てから、もう何日になるのだろうか。関羽はすでに千里の道を踏破していた」。そして、遂に、劉備、関羽、張飛は再会を果たす。
一方、小覇王・孫策は、ここ数年、目覚ましい躍進を遂げていた。「曹操もこの力を見過ごすことができず、ひそかに裏工作を始めていた」。曹操の策略が功を奏し、孫策は27歳という若さで死去する。その跡を19歳の弟・孫権が継ぐ。
時は流れ、「曹操は自分の敵となるものは朝敵の名のもとに滅ぼし、着々とその地位を固めていた。曹操がその地位を揺るぎないものにしたのは、(軍備力も兵力もはるかに曹操を凌いていた)北方の雄・袁紹を破ってからである」。
「次に曹操が狙うのは南方であった。南方を制覇して初めてこの国全土を支配下におくことができるのである。だが南方には、やっかいな人物が二人いた。一人は揚子江の河口と流域をおさえ、土地は肥え作物も豊富で、その国力もあなどりがたい呉の国王・孫権と・・・曹操のために追われ追われて、いま荊州の劉表のもとに身を寄せた劉備玄徳である。劉備玄徳は今でこそ国を持たぬ将であるが、その人物を慕う者数多く、その影響力は無視できないものがあった。さらに玄徳自身が機会があれば曹操の野望を砕かんものと考えている人物であったからである」、
江夏で起こった反乱を鎮めに、劉備は関羽、張飛、新たに加わった趙雲らを率いて出陣し、あっという間に平定するが、劉表の世継ぎ争いに巻き込まれていく。