榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

染屋五代目の日本の色に対する熱い思いが籠もった一冊・・・【山椒読書論(599)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年11月5日号】 山椒読書論(599)

失われた色を求めて』(吉岡幸雄著、岩波書店)には、京都で200年続く染屋の五代目の日本の色に対する熱い思いが籠もっている。

●生命の色――赤
著者は、赤は人類が最初に畏怖した色と位置づけている。

●高貴な色――紫
「紫という色は、光のあたらないところでは、青味の地味な色合いをしているのですが、太陽が鋭く射し込んで明るくなると、赤く輝くように華やいだ色になり、人の眼を驚かすような要素をもっているといえます。そのような意味では、皇帝あるいは天皇が、群衆にみずからの威厳を示すには、このような紫がかなり効果的であったと思われます」。私事に亘るが、私にとって紫は母の色だ。誕生日祝いや母の日のプレゼントは、母の好きな紫色のものを選ぶようにしている。

●親しみの色――藍
「染色において、青を表現するには『藍』という色材が欠かせません。この藍染の濃淡によって、さまざまな色相の青を表現するのです。私たちが耳慣れている紺色、水色、浅葱色、空色といった色名のほか、縹色、甕覗色、褐色、納戸色、青鈍色などもすべて藍染によってあらわします。もちろん藍以外に青を示す色としては、顔料の群青がありますが、私たち日本人の色と衣服の歴史から考えれば、藍を青の色といっていいのです」。

●豊饒な色、魔力の色――黄・金
「黄色という色の印象は、まず第一に、明るいこと、そして暖かいこと。さらに活動的であること、などがあげられます。・・・黄色の色の印象として、第二に目立つ、ということがあげられます」。

●草木花の色――緑と襲の色目
著者は、草木は緑の色見本帖だと述べている。

●渡来した鮮烈な色――蘇芳と臙脂
蘇芳は鮮やかな赤色、臙脂は南蛮人のもたらした赤色だそうだ。

●江戸時代の町人の色――茶・黒・白

本書のおかげで、色というものの奥深さに気づくことができた。