多種多彩な実用書系板本を乱読すると、錦絵にはない江戸時代が立ち上がってくる・・・【山椒読書論(716)】
【読書クラブ 本好きですか? 2022年6月27日号】
山椒読書論(716)
『図説 江戸のカルチャー 教養書・実用書の世界』(深光富士男著、河出書房新社)の著者は、「」と言っている。
●化粧から肌トラブルの解消法、身嗜みまで指南した超ロングセラーの総合美容署『都風俗化粧伝』
●発想力とデザイン力が光る手拭いの図案集。絵師で作家の山東京伝がまとめた『手拭合』
●今見ても楽しい江戸の商店ガイド『江戸買物独案内』
●浴法まで解説した熱海温泉の名所案内記。著者は京伝の弟・山東京山『熱海温泉図彙』
●漬物問屋の主人が著した漬物64種の漬け方『四季漬物塩嘉言』
●日本初の本格的西洋医学の翻訳書『解体新書』
●雪国・越後国のあらゆる情報を盛り込んだ、地元商人・鈴木牧之の入魂作『北越雪譜』
●蝦夷地を紹介した紀行書。北海道の名付け親で知られる松浦武四郎が著した『久摺日誌』『石狩日誌』
●琉球を多面的に図説。著者は海外事情に精通していた蘭学者の森島中良『琉球談』
●歌舞伎通の愛読書として毎年刊行された横小本の役者評判記『訳者紋二色』
●餌のやり方から増やし方まで詳細に解説した日本初とされる金魚の飼育書『金魚養玩草』
●入谷の植木屋が著した変化朝顔の多色摺図譜。南画家の田崎早雲が筆を執った『三都一朝』
●全20巻14冊。1482点もの総項目数を誇る日本初の絵入り百科事典『訓蒙図彙』
●105巻81冊から成る百科事典の大作『和漢三才図会』
●大名家や幕府役人の名鑑。完全版は分厚いが、要約した携帯用も多種類出回った『武鑑(新改 安永武鑑、新板改正 寛政武鑑)』
●酒飲みの醜態などを岡田玉山が絵本化『絵本不尽泉』
●江戸と周辺の年中行事を案内した風俗書『東都歳事記』
ヴィジュアル部分も解説部分も愉しめる一冊である。