榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

あなたにも、日本にも、訂正する力が必要だ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3286)】

【月に3冊以上は本を読む読書好きが集う会 2024年4月11日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3286)

写真創作集団VIP写真展で、甲田親助氏(写真1、2)、平井勝次氏(写真3)、昼間恭治氏(写真4、5)の作品から刺激を受けました。サクラ――ソメイヨシノ(写真6~8)、イズヨシノ(写真9、10)、ベニユタカ(写真11~13)、カンザン(写真14、15)、ウコン(写真16)、ギョイコウ(写真17)、ヤエベニシダレ(写真18、19)――が咲き競っています。

閑話休題、『訂正する力』(東浩紀著、朝日新書)の、「訂正する力」の勧めは説得力があります。

「老いるとはなんでしょうか。それは、若いころの過ちを『訂正』し続けるということです。・・・同じ自分を維持しながら、昔の過ちを少しずつ正していく。それが老いるということです。老いるとは変化することであり、訂正することなのです」。「訂正する力は成熟する力のことでもあるのです」。「(訂正する力は)また『再出発する力』でもあります」。

「日本には訂正する力が必要です」。

「訂正するとは、一貫性をもちながら変わっていくことです」。

「訂正する力は、けっして、自分に都合よく現実を見る力のことではありません。むしろ現実を直視する力です」。

「訂正する力とは、過去との一貫性を主張しながら、実際には過去の解釈を変え、現実に合わせて変化する力のことです。それは、持続する力であり、聞く力であり、老いる力であり、記憶する力であり、読み替える力でもあります」。

「訂正は人生の転機で必要になる」。「ひとはだれでも、長いあいだ仕事をしていると自分自身を訂正する必要に迫られることがあります」。

「訂正する力を使うためには、自分を交換不可能な存在として扱い、凝り固まった自分のイメージを『じつは・・・だった』の論理によって訂正してくれるような、柔軟なひとを周りに集めなければなりません。それは具体的には、小さな組織や結社をつくり、『親密な公共圏』をつくることで達成されます」。

「訂正する力は、幻想をつくる力でもあります。過去の解釈を変え、現在につながるような新たな物語をつくる。そして未来に進んでいく。・・・ぼくたちはときに、深刻な現実に直面するためにこそ幻想を必要とするのです。現実だけ見ていればいい、エビデンスを並べれば物語など要らない、という主張のほうが現実逃避になることがあるのです」。

著者の政治的な主張には首肯しかねる部分もあるが、訂正力が必要という考え方には賛成です。