己の分を弁えた人生もいいかも――老骨・榎戸誠の蔵出し書評選(その275)・・・【あなたの人生が最高に輝く時(362)】
【読書の森 2024年11月13日号】
あなたの人生が最高に輝く時(362)
●『チップス先生さようなら』(ジェームズ・ヒルトン著、菊池重三郎訳、新潮文庫)
『チップス先生さようなら』(ジェームズ・ヒルトン著、菊池重三郎訳、新潮文庫)は、哀愁の味がする。
年老いたチップス先生の思い出話に耳を傾けていると、己の分を弁えた人生というのも、それなりにいいものだなと、ほっとさせられる。
23歳も年下の妻との幸福な2年間は、チップス先生の心の中で、いつまでもセピア色の輝きを失わない。